理研ら,中性子過剰なスズ同位体の巨大共鳴を観測

理化学研究所(理研)と九州大学は,理研の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」を用いて,二重魔法数核「スズ-132(132Sn)」に対する「巨大共鳴状態」の観測に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

1973年に予言されたパイ中間子凝縮は,通常の原子核ではまだ観測されていないが,中性子星では起きている可能性があると考えられている。原子核や中性子星において,パイ中間子凝縮が起こるか否かを推測するには,パイ中間子の波が核物質中でどのように振る舞うかを理解する必要がある。

中間子のうち,パイ中間子は最も軽く,核子から最も遠くまで到達できる。そのため,この波の長距離における振る舞いには複雑な過程が含まれず,真空中に孤立しているパイ中間子の性質に基づいて比較的よく理解される。一方で,短距離における振る舞いには複雑な過程が含まれるため,それを定量的に記述することは困難だという。

今回研究グループは,このRIBFにおいて生成された132Snビームを液体水素標的に照射し,引き起こされた「荷電交換(p,n)反応」を荷電交換(p,n)反応から放出される中性子を検出し、そのエネルギーと放出角度を測定するための装置の「WINDS中性子検出器」と核反応後に生じる粒子の種類の同定,運動量とその方向の決定に用いられる磁気分析装置の「SAMURAI磁気スペクトロメーター」を用いて測定することで,パイ中間子凝縮の性質を反映する巨大共鳴状態(ガモフ・テラー巨大共鳴)の観測に成功した。

ガモフ・テラー巨大共鳴とは,スピンとアイソスピンがそれぞれ1単位変化しながら振動している状態。この観測で得られたスペクトルと理論計算の比較から,パイ中間子凝縮が通常の原子核密度の2倍以上の環境,すなわち太陽質量の1.4倍より重い中性子星で起こっている可能性が高いという結論を得たという。

研究グループは今回の研究により,パイ中間子凝縮と呼ばれる相転移現象が起こる条件が明らかになり,中性子星の構造や急速冷却現象の解明が期待できるとしている。

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