OIST,水晶体構築における抑制メカニズムを発見

沖縄科学技術大学院大学(OIST)は,水晶体の分化の過程において,アクセルとして働く線維芽細胞増殖因子(FGF)とは異なる分子シグナルがブレーキとして働き,分化すべきでないときに細胞が分化することを防ぐことを発見した(ニュースリリース)。

多細胞生物のさまざまな細胞がどのようにしてその個性を獲得するのかという問題は,今日の発生生物学においても基本的なテーマになっている。たとえば眼の場合,水晶体は2種類の細胞,すなわち水晶体上皮細胞と水晶体線維細胞から構成されている。動物の成長とともに,水晶体上皮細胞は水晶体線維細胞に分化する。この分化の過程で,FGFが主要なアクセルとして働くことが以前から知られていた。

今回,研究グループはヒトを含む脊椎動物と基本的に相同な構造の眼をもつゼブラフィッシュの変異体の中から,水晶体発生にユニークな異常を示す突然変異体を発見した。

通常,水晶体上皮細胞は単層の上皮を形成するが,この変異体では,水晶体上皮細胞がランダムに積み重なった細胞塊になっている。この表現型は,水晶体上皮細胞が移動しながら水晶体線維細胞に分化を開始する境界である「赤道」で,分化を促進するFGFシグナルの作用とは独立に,変異遺伝子によって,水晶体上皮細胞が赤道を通過する前に,線維細胞分化を引き起こすためであることが明らかになった。

この変異遺伝子は通常,「液胞タンパク質選別関連タンパク質45」(VPS45)と呼ばれるタンパク質をコードしている。VPS45は,細胞膜から取り込まれた物質,おもにタンパク質を,分解に特化した細胞内小器官であるリソソームへ輸送したり,再利用のために再び細胞膜に戻したりする,例えば定期往復便をコーディネートするような役割を担っている。

最近の研究から,この輸送システムは,細胞内のシグナル伝達経路を調節し,それにより発生過程を制御することが示唆されている。実際,今回の研究でVPS45遺伝子に変異が生じると,水晶体上皮細胞を維持するシグナル経路が抑制され,線維細胞への分化を促進するシグナル経路が亢進することで,正常な水晶体発生が損なわれることが明らかになった。

研究グループは今回の研究が,水晶体発生の仕組みを解明するだけでなく,ヒトの白内障手術で最も多く見られる合併症である,後発白内障の原因を明らかにするために役立つとしている。

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