NIMSら,数万気圧下で中性子3次元偏極解析に成功

物質・材料研究機構(NIMS)は,日本原子力研究開発機構と共同で,完全に非磁性体で作られた高圧力セルを開発し,数万気圧という特殊な環境において物質の電子スピン配列を詳細に解析できる中性子3次元偏極解析実験に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

近年,物質の磁気的性質の起源である電子のスピンを制御することで,マルチフェロイクス材料などの新しい機能性材料の開発が進んでいる。その開発には,物質内のスピンの配列を観測する中性子回折実験が不可欠であり,特に精密なスピン配列の評価には,中性子3次元偏極解析と言われる中性子スピンの向きを3次元的に制御し,解析する手法が使われている。

しかしこの手法では,中性子スピンの偏極率を維持するために,試料空間を完全無磁場状態に保つ必要がある。従来の高圧力下実験で用いる高圧力セルは,磁束を発生する磁性体材料で作られているため,高圧力下実験は不可能だった。

研究グループは今回,従来の高圧セルで用いられている磁性体材料を,非磁性のダイアモンドナノ粒子からできた複合材料に置き換えることで,完全に非磁性体材料で作られた高圧セル「完全非磁性ハイブリッドアンビルセル」を開発した。そして,高圧力セルによって中性子スピンの偏極率が低下させられないことを確かめた。

さらに,デラフォサイト鉄酸化物に対して,4万気圧までの高圧力環境下での中性子3次元偏極解析実験に成功した。大気圧・無磁場下では強誘電性を示さない物質が,数万気圧という圧力を加えることによって強誘電性を示すマルチフェロイクス材料に変化することを見出した。これは強誘電性を示さない物質が,圧力によって強誘電性を示すマルチフェロイクス材料に変化する初めての例だという。

研究グループは今回開発した手法がマルチフェロイクス材料だけでなく,超伝導材料などのスピン配列と機能に密接な関係がある機能性材料に対しても応用できるとしている。また、今回の実験は世界最強の中性子強度をもつ、フランスの中性子施設で行なったが,将来的には国内の中性子源を有する大強度陽子加速器施設(J-PARC)の物質・生命科学実験施設や,研究用原子炉JRR-3でも,高圧力下中性子3次元偏極解析実験を可能にすることで,国内の物質材料研究にも大いに貢献できるとしている。

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