学習院,繊毛を光ピンセットで捕捉に成功

学習院大学は,独自に開発した顕微鏡を用いて,マウスの気管表面の繊毛1本の動きを高精度・高速度で撮影することに成功した。加えて,光ピンセットで繊毛の先端を捕捉し,人為的な負荷を与えても繊毛が周期的に動き続けることを可視化した(ニュースリリース)。

私たち哺乳類の気管には,異物を押し流すために,肺からのどへ向けた粘液層の流れが存在する。この流れは長さ数ミクロンの気管表面に生えている繊毛の周期的な運動により生み出されている。しかしこのような変動の多い環境下で繊毛がどのように安定した動作をするのか,その詳細はよくわかっていなかった。

今回,研究グループは独自に開発した顕微鏡を用いて,繊毛1本の動きを高精度・高速度で撮影することに成功した。マウスの気管から1本の繊毛を取り出し,先端に蛍光ビーズを付着させ,研究グループが開発した蛍光を発する微小な物体の動きを3次元的にとらえる特殊な光学顕微鏡を使って高速度の撮影をした。

その結果,繊毛はネバネバしていて動きにくいような場所でも周期的に動くだけでなく,動きの高さの差を維持することがわかった。コンピュータを用いた計算により,この高さの差を維持する性質によって,気管表面のような粘度が高い環境下でも流れを生み出すことができることがわかった。

さらに研究グループは,光ピンセットを用いて,繊毛の一部分のみに負荷をかけるという,特殊な環境下での3次元測定も行なった。繊毛先端に付着させた蛍光ビーズに400mWの赤外レーザー光を照射することにより,50pN程度の負荷をかけ,繊毛の先端を優しく「つまむ」ことに成功した。

繊毛先端の動きを強く制限すると繊毛は上下に動くようになった。しかしこの場合でも繊毛はほぼ同じ周期で動き続ける性質を持っていることがわかった。

繊毛が上下運動をするようになった理由は不明だが,繊毛は動きを制限すると周期的な運動が出来なくなると考えられていたのでこれは新しい知見となるもの。気管表面のような高粘度の環境でも,この繊毛がもつ周期を維持するロバスト設計によって運動を維持できると考えられるという。

気管繊毛の高精度測定と光ピンセットによる捕捉は世界で初めて。今回の研究は,繊毛運動を「動き」と「力」の双方から詳細に分析したもので,運動機構のしくみに迫るもの。今回えられた知見により,繊毛病をはじめとした繊毛関連疾患の根本的原因の理解へつながることが期待されるとしている。

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