筑波大ら,高性能フレキシブル熱電薄膜を開発

筑波大学と産業技術総合研究所は,無機材料を用いた高性能フレキシブル熱電薄膜の開発に成功した(ニュースリリース)。

あらゆるモノの状態を把握・制御できる無線センサーネットワークは,IoT社会のコア技術とされている。そのセンサー用電源として,配線や電池交換を不要とする「熱電変換」の技術が急速に注目を集めている。

中でもシリコンゲルマニウム(SiGe)混晶は,熱電変換材料としてトップクラスの変換効率(約10%)をもつ無機材料で,惑星探査機用の電源として30年以上稼働してきた実績がある。SiGe混晶はシリコンとゲルマニウムの混晶半導体。高い熱起電力が得られることに加え,合金散乱により高い熱抵抗を持つため,熱電材料として古くから実用化されている。

もし軽くて柔らかいプラスチックの上にSiGe膜を形成することができれば,あらゆるモノに設置可能なフレキシブル熱電変換素子の開発が期待される。しかしプラスチックは耐熱温度が低いため,優れたSiGe膜を直接合成することは困難とされてきた。

今回研究グループは「層交換法」を利用することでこの問題を解決した。層交換法は,任意の基板上に金属層,非晶質半導体層を順次堆積した後,熱処理を施すことで層の交換を誘起し,基板上に半導体結晶層を得る手法。半導体層の結晶化に必要な温度を劇的に低減することが可能であり,プロセスが簡便である点も魅力という。

研究グループは,金属層をアルミニウム(Al),非晶質半導体層をSiGeとして層交換を誘起することにより,プラスチック(ポリイミド:耐熱温度400℃)基板上にSiGe結晶層を直接合成することに成功した。

得られたSiGe膜は,膜中に含まれるAl原子により高い電気伝導度をもち,熱電変換の性能指標となるパワーファクター(ゼーベック係数の2乗と電気伝導率の積で表される,単位温度差当たりの発電電力)は低温合成膜として最高レベルの値(約200μW/mK2)を示した。さらに,試料を湾曲させてもパワーファクターの低下は見られず,高いフレキシビリティを実証したという。

研究グループは,この研究が,過酷な環境にも耐えられる無機材料であるが故に劣化等の心配はなく,また合成法は簡便であることから,フレキシブル熱電変換素子の実応用に則した革新技術として期待されるとしている。

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