広島大ら,局所的に電子運動を計測する手法を開発

広島大学,産業総合技術研究所らは,角度分解光電子顕微分光装置を用いて,局所的な電子の運動を計測する新しい2つの測定手法(高速/精密モード)の開発に成功した(ニュースリリース)。

固体物質は,電気をよく流す金属,低温で電気抵抗がゼロになる超伝導体など様々な状態を示す。これらの性質が起こる仕組みを理解し,物質の性質を制御するには電子がどのように運動するかを調べることで,物質の性質を明らかにできる。

「角度分解光電子分光」は,固体に光を入射して,光電効果により固体外に放出される電子の「エネルギー」と「角度」を計測することで,固体中の電子の運動を直接的に調べることができる。その中でも先端計測の1つとして「角度分解光電子顕微分光」が注目されている。

従来の角度分解光電子分光では,試料が実空間で不均一性を有していたとしても,入射光のビームサイズが大きいために異なる情報が混ざり,個々の電子の運動の様子を詳細に調べることが難しい。しかし角度分解光電子顕微分光は,入射光を微小に集光し試料表面を選別して観測することで,試料表面の不均一性なども反映し,より本質的な電子の運動を調べることができる。

近年,研究グループは角度分解光電子顕微分光装置を開発。この装置を利用すると,数ミクロンレベルで試料表面の位置を選択しながら,電子の運動を高精度に調べることができる。しかし角度分解光電子顕微分光では,空間精度という自由度が増えたために,顕微鏡などの分野でよく用いられている「走査型マッピング」を今回導入した。

この手法は「測定」と「測定点の変化」を同時に行なうため,待機時間が1点1点生じず,測定点の多い顕微測定でも高速に測定することが可能。動作確認をそれぞれの方法で空間マッピングを行ない,所要時間を計測した。その結果,本質的にほぼ等しい強度分布データが得られたの対して,段階型マッピングが126分ほど,走査型マッピングは60分ほどの所要時間となり,走査型マッピングでは約2倍の高速測定の実現したという。

角度分解光電子分光の測定では,電子の角度分布を調べるために,試料位置の変位を数学的に取り扱った。これにより回転中心から,回転した際の位置の行き先を予測できる。今回の研究では,蛍光塗料にレーザーを照射し,回転に伴うレーザースポットの位置変位を,高倍率マイクロスコープの画像イメージ上で追跡(位置補正)することで,回転中心を高精度(10ミクロン以下)に決定した。

実際に角度マッピングを行ない,偏芯と補正のテストをした結果,他のドメインが隣接している状況においても他のドメインの強度を含まない本質的な結果が得られたという。研究グループは,今回開発された新しい2つの測定手法は,オペランド計測への応用など,次世代の物性計測・分析手法として期待できるとしている。

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