東大ら,強誘電ドメイン壁の構造をカメラで可視化

東京大学と産業技術総合研究所は,共同で強誘電体内で自発分極の向きが揃った強誘電ドメインの境界をなす3次元的なドメイン壁の構造を,CMOSカメラを用いて,高速・大面積・非接触に可視化する新しい測定技術の開発に成功した(ニュースリリース)。

強誘電体は,固体内で電気分極が一方向に整列し,かつその向きを自由に変えられる性質を持つことから,ICカード等のメモリ素子や各種センサー素子を含む幅広い用途のため用いられている。近年,塗布によるデバイスの製造が可能で,かつ非常に優れた特性を示す有機強誘電体が多数見出され,その実用化が期待されている。

強誘電体の分極反転動作は,固体内で分極方向の異なるドメイン同士の境界(ドメイン壁)が移動することによって生じる。このため強誘電特性の理解には,強誘電体内でドメイン壁がどのように存在しているのか,またそれらがどのようにミクロな運動をしているのかを明らかにする必要がある。

特に,水素結合型有機強誘電体内のドメイン壁の挙動は,従来の硬い素材からなる無機強誘電体とは異質なものになると考えられているが,材料内部のミクロなドメイン壁の様子を調べることは難しく,これまでその様子を明らかにすることはできなかった。

今回,研究グループは,反転対称性を持たない強誘電体が一次の電気光学効果を示し,外部電界の印加によって生じる光吸収率の僅かな変化が電界の向きにより符号が変わることに着目し,これを用いて強誘電ドメインを可視化する新たな測定手法を開発した。

電界の印加により生じた僅かな光吸収率の変化を高感度にイメージングするための手法としては,CMOSカメラを用いて,有機トランジスタのチャネル内のキャリア分布を高感度に画像化する「変調イメージング技術」を用いた。この新しい手法は「強誘電体電界変調イメージング(FFMI; Ferroelectric Field Modulation Imaging)法」と呼び,強誘電体中の強誘電ドメイン構造を,高速・大面積・非接触に可視化できる。

研究グループは,測定観察技術の高速・高感度化を進めるとともに,これを水素結合型有機強誘電体に適用し,実際のドメイン壁構造の観察,PFM法による測定結果との比較,及びX線回折法による結晶軸との相関を詳細に調べることにより,有機強誘電薄膜内で大きく傾斜した特異な3次元ドメイン壁構造を初めて捉えたという。

研究グループは,今回の研究により,強誘電ドメインの形成・運動機構の理解が大きく進むとともに,有機強誘電体の開発とデバイス応用が加速できるとしている。

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