京大ら,太陽系の果てに極小の始原天体を発見

京都大学を中心とする研究グループは,太陽系外縁部「エッジワース・カイパーベルト」に惑星の形成材料である始原天体「微惑星」の生き残りと推定される極めて小さなサイズ(半径およそ1km)の天体を発見した(ニュースリリース)。

地球を含む太陽系の惑星は,太陽系誕生時に大量に存在した半径1-10km程度のサイズの小天体「微惑星」が,衝突・合体を繰り返して現在の大きさまで成長したと考えられている。

こうした微惑星の一部は成長過程から取り残され,約46億年経過した現在においても,海王星より遠方の太陽系の果て「エッジワース・カイパーベルト」(カイパーベルト)という領域に生き残っていると予見されてきた。

最先端の望遠鏡を用いても直接観測不可能なキロメートルサイズのカイパーベルト天体を,研究グループは掩蔽(えんぺい)と呼ばれる天文現象を利用し,市販の口径28cm望遠鏡という小さな望遠鏡と,速いデータの読み出しが可能で,星空を動画で撮影できるCMOSビデオカメラによって発見することに成功した。開発費用は破格の350万円。

掩蔽とは観測者から見て前方の天体が後方の天体の手前を通過し,後方の天体から届く光を遮る現象。天球上を移動しているカイパーベルト天体はときおり背景の恒星の手前を通過して,0.5秒間だけ掩蔽を起こす。よって恒星を動画で観測し続け,ときおり発生する掩蔽による明るさの変化を観測できれば,直接観測できないカイパーベルト天体を発見できる。

研究グループは掩蔽観測を実現する専用の観測システムを2台開発した。今回,この観測システムを沖縄県宮古島市に設置し,2016-2017年の夏季に断続的に星空の動画モニタ観測を実行した。

2台の望遠鏡は一度に観測できる恒星の数が多い天の川の中にあり,かつカイパーベルト天体の数が多い黄道近くにあるいて座の領域に向け,約4平方度の視野内の約2000の恒星を約60時間観測した。得られた動画データを解析した結果,視野内にある12等の見かけの明るさを持つ恒星が,約0.2秒間だけ最大約80%減光しているのを発見した。

この明るさの変化は2台の観測システムで同時に観測されており,雲による遮蔽などの影響では説明できない。詳細な解析の結果,この恒星の明るさの変化は地球から約50億km離れた半径およそ1.3kmのカイパーベルト天体による掩蔽によって説明できることがわかった。

研究グループは,今後も掩蔽を用いた観測を続けることで,これまで未開の世界であったサイズの小さいカイパーベルト天体の特性がより詳細に明らかになり,惑星の形成プロセスや彗星の供給過程が解明されることが予想できるとしている。

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