東北大学と米ボーイングらは,水中に砥粒を混濁させてウォータージェットを噴射する表面改質法を考案し,金属製積層造形材の疲労強度を66%向上できることを実証した(ニュースリリース)。
金属製積層造形材は,航空機部品や従来の機械加工にとらわれない形状設計が可能,CADデータを用いて直接的に製作できる,切削による材料の廃棄率が少ない,などの利点から,生体用インプラントへの適用が検討されている。
しかしながら,造形材の表面には材料の金属粒子の溶け残りが残存して表面粗さが著しく大きいために,金属製積層造形材の疲労強度がバルク材に比べて極端に小さいという弱点がある。
フライス盤や旋盤などの機械加工によって表面を平滑化すれば,疲労強度を向上できることがわかっているが,それでは積層造形のメリットを活かせない。そこで,積層造形材の表面粗さを低減して疲労強度を向上でき,かつ,複雑形状に対応可能な表面改質法が望まれている。
今回,研究グループは,金属製積層造形材の疲労強度を向上できる表面改質法の構築を目的として,電子ビーム積層造形で作製したチタン合金Ti6Al4Vを対象に研究を実施し,表面改質法を開発した。
この表面改質法は,キャビテーションという泡を使って金属をたたいて圧縮の残留応力を付与すると同時に,砥粒の衝突作用により表面粗さを低減する。水中ウォータージェットを用いた加工で,曲面や複雑形状も加工できる。超音波ではなく,ノズルを使ってキャビテーションを発生させるので,効率よくキャビテーションを発生できるという。
研究グループは,この表面改質法により,電子ビーム積層造形で製作したチタン合金の107回における疲労強度を66%向上させることに成功した。この表面改質法は,化学研磨と異なり,薬品を用いることなく水と砥粒を使用する点で安全性が高い加工としている。