京大ら,電子液晶による不思議な金属状態を発見

京都大学,東京大学,オランダ・ラドバウド大学は,ある種の鉄系超伝導体において,液晶状態になろうとする「やわらかい電子」が,従来金属とは異なる不思議な金属(ストレンジメタル)状態を示すことを発見した(ニュースリリース)。

物質の状態には,気体,液体,固体のほかにも液晶状態があり,これと同じように,固体内部に存在する多数の電子の集団も,様々な状態を実現し得ることが近年明らかになってきている。より最近の研究では,電子集団は,ある一方向へと揃おうとする液晶のような状態にもなることが明らかになってきている。

このような物質群には,銅酸化物高温超伝導体や鉄系超伝導体などがあり,特に電子の液晶状態が,化学組成や圧力などの変化によって絶対零度まで完全に抑制された消失点(臨界点)の近傍では,電子集団は量子力学的な効果によって依然として一方向へと整列しようとする傾向をもった非常に「やわらかい電子状態」が実現する。しかし,その金属状態はこれまで未解明だった。

今回,研究グループは,鉄系超伝導体の一種であるセレン化鉄(FeSe)に着目した。この物質は,温度を冷やすことで鉄原子の電子軌道の方向が揃った液晶状態を示し,さらに低温に冷やすことで超伝導状態を示すが,他の物質によく現れる磁気的な秩序を示さないのが特長となる。

また,この物質では,セレン(Se)の一部を硫黄(S)で置き換えることで電子液晶状態が現れる温度を抑制することができ,特にセレンを16%程度硫黄で置き換えると,電子液晶状態が完全に消失したにも関わらず,量子効果によって液晶状態に強くなろうとしている「やわらかい電子状態」を実現することができる。

今回,研究グループは,セレン化鉄を幅広く硫黄置換したFeSe1-xSxの高品質純良単結晶を作製し,電気特性を詳細に測定することでその金属状態を調べた。一連の物質では,低温で電気抵抗がゼロになる超伝導が出現するため,電気特性を調べるためには超伝導状態を壊す必要がある。そこで研究グループは,強い磁場をかけることで超伝導状態を壊し,電気特性を極低温まで調べた。

その結果,電子液晶状態の消失点の周辺で,通常金属とは異なる不思議な金属状態が現れることが明らかになった。通常の金属では,電気抵抗は温度の二乗に比例して増加するのに対し,電子液晶状態の消失点周辺では,温度の一乗に比例した不思議な金属状態が出現する。さらに,その領域では,電子の有効的な重さが増大していることが明らかになった。

研究グループは,今後,この不思議な金属状態の性質を明らかにすることで,高温超伝導など物質の示す特異な電子状態を実現するための新たな指針になるとしている。

その他関連ニュース

  • 東北大,光ナノインプリントで液晶の分子配列を均一化 2019年05月22日
  • 阪大ら,レーザーによる加熱機構を特性X線で解明 2019年05月14日
  • ニコン,マルチレーザー金属加工機を発売 2019年04月11日
  • 首都大ら,層状超伝導体結晶で特異な異方性を発見 2019年03月04日
  • 京大ら,中性子回折で高温加工熱処理プロセスを解析 2019年02月21日
  • 東北大ら,金属製積層造形材の疲労強度を1.6倍に 2019年02月12日
  • 東大,電気と光で演算的に作動する液晶素子を開発 2019年01月16日
  • 東大,光で絶縁体を未知の金属相へ相転移 2018年10月18日