分子研,水平交互多層接合で有機太陽電池を開発

分子科学研究所は,従来の有機太陽電池の標準構造であった「バルクヘテロ接合」の代わりになる,「水平交互多層接合」による新コンセプト有機太陽電池の動作に成功した(ニュースリリース)。

有機太陽電池のバルクヘテロ接合(ブレンド接合)は,有機太陽電池の世界標準になっている。これは,電子受容性(アクセプター性)と電子供与性(ドナー性)の有機半導体分子を混ぜ合わせたブレンド膜で,植物の光合成と同じく,アクセプター分子とドナー分子の間に起こる電子移動を利用して,光電流を発生できる。

ただ,バルクヘテロ接合は,電子とホールを途切れずに輸送するルート形成が技術的に非常に難しいという弱点があり,世界中で,新しい有機半導体分子を合成してはそれをブレンドして性能を評価するという,トライアンドエラーに頼らざるを得ない状況が続いている。また,太陽光全てを吸収利用できる,1ミクロン程度のブレンド厚膜を作製することが困難だった。

今回,研究グループは,電子とホールを,基板に対して水平方向に取り出す「水平交互多層接合」という新しいコンセプトに基づいて有機太陽電池を設計・作製し,バルクヘテロ接合を超える方法を示した。

具体的には,まず,有機分子のホールハイウェーと電子ハイウェーを作製し,ホール,電子をミリメーターのマクロな距離で,水平方向に取り出せることを証明した。さらに,研究グループオリジナルの可動マスク機構を用いて,わずか5分子層のホールハイウェーと電子ハイウェーから成る「水平交互多層接合」を作製し,世界で初めて,太陽電池として動作させることに成功した。

今回,研究グループが開発した新コンセプト有機太陽電池は,水平方向に光電流を取り出すため,垂直方向の膜厚を限りなく厚くでき,種々の吸収波長領域を持つ多様な有機半導体の組み合わせが自由自在に行なえるようになり,太陽光スペクトルの大部分を細かく分割して活用することで,20%以上の高効率化が望めるとする。

研究グループは,「水平交互多層接合」はバルクヘテロ接合を超える設計コンセプトで,現在,超高速移動度を持たない通常の有機半導体でも「水平交互多層接合」が作製できるように研究を進めていくという。また近い将来,有機太陽電池は,フレキシブル,カラフル,軽量,塗布可能,安価等の利点を活かして,太陽電池の主役となっていくと考えている。

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