μLED/レーザーなど次世代光源,2030年5.2兆円市場に


富士経済は,照明製品のモノ売りから照明制御・ソリューション・IoT化などコト売り展開の進む国内照明製品および照明制御/ソリューション/IoT化の市場や,有機ELやレーザー光源などポストLEDを担い多様なアプリケーションで拡大が期待される次世代光源の市場を調査し,その結果を「Special Appli.光源/照明市場 実態・技術・予測2019年版」にまとめた(ニュースリリース)。

この調査では,照明製品(国内市場),照明制御・ソリューション・IoT化関連(国内市場),次世代有望光源・ アプリケーション(世界市場)について,市場の現状を分析し,将来を予想した。また,光源や特殊光源/アプリケーション(世界市場)についても整理した。

国内の照明を取り巻く環境をみると,照明製品市場が低価格化やリプレイスサイクルの長期化などにより縮小を予想する中,参入各社は新たな付加価値の創出に向け,ウェルネスやIoTなどを切り口とする事業展開を推進しており,照明制御/ソリューション/IoT化市場が拡大している。一方,世界では,汎用LED市場が成熟に向かう中,ポストLED光源として注目する次世代光源の技術開発が進展し,ディスプレーや自動車,照明を始めとする多様なアプリケーションで採用が増えているという。

■照明製品の国内市場
照明製品の国内市場は緩やかに縮小しており,2018年は前年比1.9%減の8,205億円を見込む。LED照明(LED照明器具とLED管球ランプ)は伸びており,2018年は全体の80%以上の6,868億円を予測する。オフィス・ビルや店舗,施設で使用される。LED光源一体型ベースライト,工場や倉庫,体育館で使用されるLED高天井照明,住宅照明のLEDシーリングライトが中心となる。LED光源一体型ベースライトはLED直管ランプのリプレイス需要を取り込んでおり,今後も安定した需要が期待できるという

LED高天井用照明は,水銀条約に伴う水銀ランプの規制を背景に伸びるとみる。LEDシーリングライトは市場が成熟しつつあるが,高機能・多機能化やホームIoTの流れで製品開発が進んでおり,照明の新たな価値(ウェルネス,見守り,演出・エンタメ性など)を提案する製品として期待できる。

照明製品の国内市場は,LED照明の低価格化の進行や製品リプレイスサイクルの長期化などを要因とし,今後も緩やかに縮小し,2025年には2017年比19.6%減の6,729億円を予想する。LED照明はストック市場からの置き換えにより当面は伸びるものの,価格下落のため2020年以降は縮小するとみる。

一方,市場はまだ小さいものの,有機EL照明とDALI(照明制御規格)スレーブ(DALI用電源)の伸びが期待できるという。照明製品市場が縮小する一方で,参入企業は照明の新たな価値創出によるサービス展開を進めている。制御・ソリューションの拡充,有機ELやレーザー光源など次世代光源の採用,省エネに加えて省人・省力化などの「スマート」,防犯・防災機能を高める「セーフティ」,健康や生理的訴求を行なう「ウェルネス」,他設備との連携やデータ活用を行なう「IoT・コネクティッド」などのキーワードで新規価値の創出を進めてゆくとみる。

<注目市場>ウェルネス照明ソリューション
ウェルネス訴求を行なう照明製品や周辺機器を用いた照明ソリューションの市場を対象とする。具体的なウェルネス訴求としては快適性,心理的健康効果(明るさ感,色温度など),生理的健康効果(ブルーライト抑止,睡眠改善など),知的生産性の向上などが挙げられる。照明の見た目や波長を自然光に近づけるアプローチによりウェルネス訴求を行なう,自然光のスペクトルに近づけた無電極ランプやLEDパッケージなどを用いた照明器具が開発されている。

2017年頃から自然光再現を訴求する光源の開発がみられ,2018年には自然光関連の照明器具やデスクライトなどが相次いで発売されている。今後,これらの光源と制御・ソリューションを組み合わせたウェルネス照明ソリューションの提案が広がるとみられ,病院や福祉・介護施設,オフィス・ビルなどを中心に普及を予想する。また,ウェルネス意識の向上や働き方改革に伴うオフィス環境の整備などを背景に,対応製品やソリューションの拡充,参入企業の増加も期待できるため,2025年の市場は120億円を見込む。

ビジネスモデルとしては,照明メーカーが照明製品や周辺機器の販売を軸にソリューション提案を行なうケースと, 建材メーカー,オフィス家具メーカー,寝具メーカーなどが空間や価値提案のための総合ソリューション提案を行なうケースに大別される。

<注目市場>ホームIoT照明
住宅や福祉・介護施設で用いられるシーリングライトと,スポットライトやダウンライト,間接照明などのうち通信連携機能を持つ照明製品を対象とする。家庭用機器で一般的に使用されているWi-FiやBluetoothを用いて,スマートフォンやタブレット端末を介して操作を行なう製品が多い。

特にシーリングライトは,従来蛍光灯からLEDへのシフトが完了し低価格化・汎用化が進んでおり,カラーやシーン別の調光・調色機能も一般化したことで,さらなる高機能・高付加価値品としてデザイン性と共にIoT化が開発のキーワードとなっている。大手または新興の照明・家電メーカーから,スピーカー付きLEDシーリングライト,スピーカー付きLED電球,スマートスピーカー対応LED電球/LEDシーリングライト,LEDシーリングライト一体型空気清浄機などが製品化されており,照明の多機能化や照明をハブにした設備連携を想定している製品が増えている。現状,既存の住宅照明に通信連携機能を付与した製品が多く,照明器具同士の連携機能にとどまる活用が中心であるが,今後は多機能化や他設備との連携という点で改良が期待できる。

中長期的には,住宅や福祉・介護施設,小スペースの店舗などを対象に,それぞれの用途・シーン別に訴求力のある製品開発,それを実現する機能付与(単独機能および他設備連携)が市場拡大のポイントになる。製品売りだけでなく,住宅の総合ソリューションとして展開する動きもみられ,今後は住宅向けを中心に需要が増加し2025年の市場は2017年比8.8倍の300億円を予測する。

■次世代有望光源の世界市場
有機EL光源,マイクロ・ミニLED,高出力赤外光LED,UV-LED,高付加価値・次世代LED(COBパッケージ,自然光再現LED,GaNウエハーLED,AC-LED),レーザー光源を対象とした。これらの次世代有望光源は,技術開発段階にあった製品が徐々に市場に投入され始めており,今後は普及に伴う継続的な拡大が期待できるという。2030年には2017年比2.3倍の5兆2,377億円を見込む。

マイクロ・ミニLEDは,急速に技術開発が進んでおり次世代ディスプレー光源として注目する。ミニLED市場はすでに出荷が開始されており,2019年以降に採用が本格化するとみる。UV-LEDの内,深紫外光LEDは特に注目する。コスト面や性能面に改善の余地があるものの,殺菌用途での需要増加が期待できる。当面は浄水器や加湿器など家電製品向けで伸びるとみる。

また,日系メーカーが家電よりも高出力が求められる業務用・産業用水処理装置での需要開拓を目指し技術開発を進めており,採用が本格化すれば大幅な伸びが期待できる。自然光再現LEDや有機EL光源は,高演色性を生かし美術館やレストラン,化粧品販売店向けの照明向けで採用が増えている。一般照明での採用拡大の動きもあり今後さらに伸びるとみられる。また,高出力赤外光LEDは,セキュリティやセンシング用途での需要増加を見込んでいる。

<注目市場>マイクロLED,ミニLEDの世界市場
チップサイズが100µm未満のマイクロLED,100~200µmのミニLEDを対象とした。マイクロLEDおよびミニLEDは,有機ELディスプレーに続く次世代ディスプレーの光源として注目する。従来のLSDや有機ELを用いたディスプレーに比べ,高輝度・高コントラスト・長寿命・低消費電力といった優位性がある。マイクロLEDは,参入メーカーが製品化に向けた研究開発を進めている段階である。製造技術における課題が解決し量産体制が整えば,ディスプレー向けで採用が進むとみられる。

特に大型パネル用途や,スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスでの採用が期待できる。歩留まりやマストランスファーなどの課題が解決すれば,LCDや有機ELディスプレーから置き換わる可能性がある。ミニLEDは,2018年より出荷が開始されており,2019年からはミニLEDを採用した製品が発売されるとみる。当面はゲーミングモニターや大型モニターでの採用を予想する。車載ディスプレー向けの開発が進められており将来的には製品化が期待できる。今後の需要増加を予想するが,マイクロLEDの採用が本格化した際には競合が懸念されるとしている。

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