原研ら,可視化によりアルファ線放出核種を検知

日本原子力研究開発機構(原研)は,アルファ線放出核種による汚染を高い精度で検出可能なアルファ核種可視化検出器を開発し,福島第一原子力発電所(1F)で,核燃料由来と考えられるアルファ線放出核種の分布状況を高い精度で検知した(ニュースリリース)。

1F事故により放出された放射性物質の中には,アルファ線を放出するプルトニウム,ウラン等がある。これらが体内に摂取されると体内の組織・臓器が継続的にアルファ線にさらされることになり,内部被ばくをもたらす。しかし,現場で用いられている市販のZnS(Ag)サーベイメータではアルファ線の強さ(計数率)の情報のみしか測定できなかった。

今回,研究グループは,1F原子炉建屋内の床面での拭き取りにより採取されたスミヤ試料(表面汚染を採取するための円形のろ紙)に付着した放射性物質の測定を行なった。検出器とスミヤ試料間に紙を置くことによりアルファ線のみが遮蔽され,ベータ線は通過するので,紙ありなしの差分を取ることにより,アルファ線のみのスペクトルが得られる。

アルファ核種可視化検出器は,ベータ線・ガンマ線に比べて飛ぶ距離(飛程)が極めて短いという性質を持つアルファ線を精度よく計測するため,薄膜(厚さ50μm)のGAGGシンチレータとライトガイド,光検出器である位置敏感型シリコン光電子増倍管を用いた。

アルファ線がGAGGシンチレータに入射すると発光し,その光がライトガイドを介して位置敏感型シリコン光電子増倍管へと導かれる。位置敏感型シリコン光電子増倍管から出力される電気信号を処理することにより,アルファ線が入射した位置が面的(2次元的)に可視化される。この検出器はアルファ線のエネルギー情報も同時に測定できることから,アルファ線放出核種が天然核種か人工核種かの識別が可能となる。

この検出器を用いて1Fで採取されたスミヤ試料と原子力機構の核燃料施設で採取したサンプルのアルファ線のエネルギースペクトルを比較したところ,両者が非常によく一致していることがわかった。さらに,アルファ線を放出している粒子の面的な広がり(アルファ線イメージング結果)をみると,原因は不明ながら局所的な分布(粒状)と一様分布(微粒子状)が混在していることがわかった。

研究グループは,今回,アルファ線放出核種が核燃料由来で,その位置分布も特定できたことから,迅速なアルファ線放出核種の分布状況の把握が簡便に可能となり,作業環境の放射線管理や作業員の放射線防護などへの応用が期待できるとしている。

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