早大ら,光ファイバーで結合共振器量子電気力学系を実現

早稲田大学,科学技術振興機構(JST),ニュージーランド・オークランド大学の研究グループは,2つの共振器量子電気力学系を光ファイバーで高効率に結合した,結合共振器量子電気力学系を実現した(ニュースリリース)。

光子や原子の量子性を探求する上で理想的な実験対象であり,光子を用いた量子情報技術の実現に有力な系であると期待される共振器量子電気力学系や,それに続く回路量子電気力学系は,いずれも周波数が数GHz〜数十GHz程度のマイクロ波光子を用いるが,マイクロ波光子のエネルギーは室温の熱エネルギーより小さく,これらの実験では,系全体を数mK程度の極低温に冷却する必要がある。

一方,光領域の光子を用いた共振器量子電気力学系の研究も進められている。光領域の光子は周波数が数百THzであり,室温の熱エネルギーよりずっと大きなエネルギーを持つため,室温においても全く量子性を失わない。さらに,光ファイバーによって量子性を保ったまま長距離伝送できる。

このような光領域の共振器量子電気力学系の特長を生かして,量子コンピューターや量子ネットワークといった量子情報技術を実現するには,多数の共振器量子電気力学系を低損失・高効率に結合することが必要となる。しかし,従来の光領域の共振器量子電気力学系は,共振器と光ファイバーの結合効率が悪く,複数の系の高効率な結合は実現されていなかった。

今回,研究グループは,ナノ光ファイバーとファイバーブラッグ格子を組み合わせたナノ光ファイバー共振器を開発した。ナノ光ファイバー共振器は光ファイバーそのものに作り込まれた全ファイバー共振器で,光ファイバーを用いて複数の共振器を低損失に接続できる。

これにより,2つのナノ光ファイバー共振器量子電気力学系を光ファイバーで低損失・高効率に結合することが可能になった。また,この系において,数メートル離れた原子と,2つの共振器に同時に存在する光子の間の相互作用を初めて観測した。

研究グループは,今回の研究は,複数の共振器量子電気力学系の低損失・高効率な結合に初めて成功したもので,共振器量子電気力学系に基づいた高効率な光量子コンピューター実現への道を拓く大きな成果としている。また,多数の小規模な量子コンピューターを光ファイバーでつないでネットワーク化することで大規模な量子コンピューターを実現する「分散型量子コンピューター」や,量子情報を多地点間で送受信し処理する情報通信ネットワークである「量子ネットワーク」への応用が期待されるとしている。

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