ソニー,裏面照射型グローバルシャッターCMOSを開発

ソニーは,産業機器向けに,歪みの無い高い撮像性能と小型化の両立を実現する独自の裏面照射型画素構造のグローバルシャッター機能を搭載した積層型CMOSイメージセンサー技術「Pregius S」の開発に成功した(ニュースリリース)。

従来のグローバルシャッター機能を搭載したCMOSイメージセンサーは,フォトダイオードの隣に形成したメモリー部に一時的に電荷信号を蓄えることで,行毎の読み出し時間のずれによる画像の歪み(フォーカルプレーン歪み)を解消している。

表面照射型CMOSイメージセンサーは,フォトダイオードを形成するシリコン基板の上に配線層があり,メモリー部に一時的に蓄えた電荷信号を,漏れ光から保護するための遮光部を形成しやすいメリットがあった。そのため,従来のグローバルシャッター機能搭載のCMOSイメージセンサーは,表面照射型画素構造が採用されていた。一方,フォトダイオード上部の配線が入射光の妨げになることが,画素の小型化において課題となっていた。

今回,同社は,感度特性に優れる裏面照射型で,グローバルシャッター機能を実現する独自の画素構造を開発し,小型化の課題を解決した。通常,画素を微細化すると感度や飽和特性は低下するが,今回それを維持しながら,画素サイズを2.74µmに微細化することで,従来の表面照射型CMOSイメージセンサーに比べて,約1.7倍の高解像度化を実現した。

これにより,製造・検査・物流などにおいて,対象物をより広範囲,高精度に測定・検査することが可能になる。また,裏面照射型画素構造が持つ配線レイアウトの高い自由度により,従来比約2.4倍の高速性を実現し,測定や検査工程の時間短縮などの大幅な生産性向上に貢献するという。

加えて,様々な信号処理回路を搭載できる積層型構造を活用することで,測定・検査画像の必要な部分だけの信号処理などを従来よりも小型で実現することが可能となる。これにより,後段処理の負荷の軽減や,保持するデータ量の削減などができ,省エネで高効率なシステムも実現するとしている。

この開発品は,2019年の夏以降にサンプルを出荷予定。撮像性能は以下の通り。
•画素数 約1.7倍(1200万画素→2000万画素)
•量子効率(Peak QE) +20%
•飽和信号量(単位面積当たり) +44%
•ダイナミックレンジ +12%
•光入射角依存特性(入射角20°の光に対する感度) 約2倍
•高速性(出力データレート) 約2.4倍
※数値は,同社の1.1型有効約1200万画素表面照射型CMOSイメージセンサー「IMX253」と,今回の技術を適用した1.1型サンプルとの比較。

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