名工大,可視光応答性光触媒を簡便に作製

名古屋工業大学は,原子レベルでよく表面制御された「可視光応答性酸化チタン(TiO2)光触媒」のワンステップかつ短時間合成手法の開発に成功した(ニュースリリース)。

光触媒は,光を吸収することにより通常の触媒プロセスでは進行困難な化学反応を常温で引き起こすことができる環境浄化材料として注目され,無毒で高い熱的安定性及び光触媒活性を有することから酸化チタン(TiO2)が現在広く用いられている。

利用範囲拡大のため蛍光灯などの「可視光応答性光触媒」の研究開発がこれまで盛んに行なわれており,中でも低価数イオンであるTi3+や酸素欠陥を多く含む還元性TiO2が高い可視光吸収特性と光触媒活性を示すことが知られている。

光触媒反応が物質表面で起こるという特性上,高い可視光応答性を発現させるためには粒子最表面における結晶格子の緻密な制御によるバンドギャップ設計が要求される。現在合成に広く用いられている液相法では欠陥形成の空間的制御が非常に困難であるほか,合成工程が複雑かつ複数に渡り,実用上の問題点があった。

研究グループは,ワンステップかつ短時間・省エネルギーでの合成手法として,シングルモードマイクロ波照射による金属の化学状態変化に伴うマイクロ波吸収特性の変化とその酸化挙動に世界で初めて着目した。

今回の研究では,わずか十数秒のマイクロ波磁場照射により誘起される特異反応場を利用した金属の酸化反応により粒子表面に欠陥種(低価数イオンTi3+および酸素欠陥)を選択的に形成させたTiO2を合成し,その表面化学構造およびに可視光応答性,光触媒活性を調査した。

その結果,合成したTiO2が可視光全域で高い吸収特性と非常に狭いバンドギャップを示した。さらに,可視光照射下における色素(ローダミンB)の分解実験において,一般的に低活性であると認識されているルチル型結晶かつ市販高活性光触媒の100倍以上の粒子サイズであるにもかかわらず優れた光触媒活性を示すことを明らかにした。

また,研究グループは,化学表面の詳細な評価・解析により,粒子最表面への高濃度欠陥の選択的形成により光触媒活性効率の低下を引き起こす光励起キャリアの再結合が抑制されるとともに,マイクロ照射時に流入させる混合ガス中の酸素量の違いによって異なる生成メカニズムを有することが示唆され,マイクロ波が誘起する熱履歴がその特異な化学表面・粒子構造の形成に寄与していることがわかったという。

研究グループは,この技術はグリーンプロセスを用いた高効率な可視光応答性TiO2光触媒生産拡大に貢献するだけでなく,特異な化学表面を有する酸化物を短時間かつ容易に合成できるため,これまでにない機能性を持った材料開発の可能性を拓くとしている。

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