理研ら,X線検出器の感度ムラを補正

理化学研究所(理研)らの共同研究グループは,X線検出器の感度ムラによるノイズに埋もれていた信号を浮き彫りにする「レリーフ補正法」を開発した(ニュースリリース)。

一般に,検出器には「感度ムラ」と呼ばれる個々の画素のX線に対する感度のばらつきが少なからず存在する。その補正には,あらかじめ強度のわかっているX線を用いるのが一般的だった。ただし,補正の基準となる値にも誤差があり,放射光のような極めて強いX線に対しても有効な感度補正法はこれまで確立されていなかった。

研究グループはまず,散乱データをもとに検出器の真の感度を統計的に推定できないかと考えた。ある試料にX線を照射し,一定の角度(Δ2θ)に散乱されるX線を検出器の異なる2つの領域で測定した。測定時間が同じであれば,互いの強度は統計誤差の範囲で一致する。

しかし,感度ムラによるノイズが統計誤差を上回ると一致しなくなる。今回開発した方法は,この不一致度を利用して感度を統計的に推定しようとするもので,従来法と異なり,補正のための基準は一切不要になる。

感度ムラは,検出器の経年変化や実験環境の変化などが感度に影響を及ぼすため,その都度補正する必要がある。そこで,「観測結果(散乱データ)から見えない状態(真の感度)を推測し明らかにする」というベイズ推定の考え方をもとに,さまざまな試行実験を行なった。

その際,散乱データを測定するたびに補正係数を更新することにより,真の感度に近づく速度が向上するのではないかという着想に至った。この方法によると,3日以上かかっていた測定を半日以下に短縮でき,検出器の状態や実験環境に合わせてその都度補正することが可能になった。さらに,更新の回数や順序を最適化することで,更新しない場合より高い精度で補正できることがわかったという。

この補正法を,大型放射光施設「SPring-8」の理研物質科学ビームラインBL44B2にある全散乱計測システムに適用した。その結果,これまで感度ムラによるノイズに埋もれて検出できなかった微弱な散漫散乱やブラッグ反射を観測できるようになった。

今回,見えなかったものが「浮き彫り」になったことから,この方法を「レリーフ(Relief)補正法」と名付けた。さらに,補正前でも検出されていたブラッグ反射はより一層鮮明になったという。これらの散乱の一部から,補正前はX線強度に対して1%近くあった感度ムラが約0.1%へ減少していることがわかった。

研究グループは,この研究成果が,さまざまなタイプの検出器にも応用できる高い汎用性を秘めているため,画像検出器を用いた病状の診断精度の向上などにも貢献するとしている。

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