東大ら,柔軟なスピントロニクスセンサーで動作計測

東京大学,村田製作所の研究グループは,柔らかい有機シート基板上にひずみの方向をセンシング可能なスピントロニクス素子を形成し,手の甲に生じるひずみを検出することで,曲げた指の方向を同定することに成功した(ニュースリリース)。

ハードディスクや不揮発性磁気メモリーなどの磁気記録デバイスは,スピントロニクス技術の発展とともに大きく記録容量を伸ばし,なくてはならないものとなっている。しかし,そこで使われているスピントロニクス素子は,硬い基板に支えられ,曲げたり伸ばしたりする状況下での使用は想定されていなかった。

今回,ひずみ方向がセンシング可能な柔らかいスピントロニクス素子を手の甲に貼りつけ,小指から順に指を折り曲げていくと,抵抗が変化することがわかった。これは,曲げた指の方向へ素子が引っ張られ,素子構造内の強磁性ナノ薄膜の磁化(N・S極対の軸)の向きが回転することによる。

また,曲げた指に応じて抵抗変化の様子が異なることがわかった。これは,磁化が回転する方向が指の種類によって異なること,つまり,外部から磁界を加えることなく,指を曲げるだけで自在に磁化の方向を回転させることができていることを示している。これにより,このデモンストレーションの場合は,どの指を曲げたかが同定できていることがわかった。

今回,巨大磁気抵抗効果により,ひずむことで抵抗が変化するスピントロニクス素子構造を用いたが,いわゆる磁石である強磁性体と,露わには磁化を持たない磁性体である反強磁性体のナノ積層膜を構造の中に用いることで,外部から補助的な磁界などを与えることなく,安定したセンシング動作が可能となることがわかった。

研究グループは,今回の研究が,スピントロニクス素子がウェアラブルなセンサーとしてもその性能を発揮できることを示すものであり,同素子を集積化したシートを用い,広い範囲の表面ひずみを検出することによって,より精密かつあらゆる箇所の生体モーション推定に向けた取り組みへの突破口を拓くものとしている。

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