阪大ら,レーザー誘起蛍光法でビールの泡模様を解明

大阪大学とキリンの研究グループは,コップに注いだギネスビールの泡が作り出す模様が,雨水が傾斜面を下降する際に現れる模様(転波:てんぱ)と同様に,コップの傾斜面を液体の塊が転がり落ちているものであることを世界で初めて明らかにした(ニュースリリース)。

ギネスビールという黒ビールは窒素ガスが加圧封入されており,コップに注ぐとコーラや炭酸水に含まれる炭酸ガスの泡の1/10程度の微細な泡が発生し,また泡がコップの上から下へと移動する美しい模様が現れることが知られている。これまでその模様の発生原因についていくつかのモデルが示唆されていたが,解明はされていなかった。

今回,研究グループは透明な「模擬ギネスビール」を作成し,レーザー誘起蛍光法を用いた粒子画像速度計測法や分子タグ法を用いた可視化実験により,今まで黒ビールの液体が不透明なために不可能であった液体の速度分布を精緻に計測することに成功した。

今回の研究では,中空ビーズと水を用いて透明な「模擬ギネスビール」を作った。ビーズの直径と量を制御できることは,再現性の高い実験を行なう上で有利になる。蛍光発光するトレーサ粒子の動きを高速度ビデオカメラで撮影し,その動きから液体の運動を精緻に計測できた。

また,分子タグを用いることで,模擬ギネスビールの液体が非定常な運動をする様子を「見える化」することに成功した。この手法を用いてさまざまな傾斜角度の容器に「模擬ギネスビール」を注ぎ,模様が発生「する」・「しない」条件を探し出した。流れを観察した結果,傾斜した壁面の近傍から約1mmの領域のみで模様が発生し,鉛直な壁面の近傍では模様が発生しないことがわかった。

そして,傾斜壁面近傍では泡を含まない液膜(清澄層)が傾斜壁に沿って流れ落ちる様子を観察し,模様が発生している条件では泡を含まない流体塊が高速で落下する様子を捉えた。

これらの結果,コップの傾斜角度が小さい(フルード数が大きい)時には模様が出現し,一方でコップの傾斜角度が大きい(フルード数が小さい)時には模様が出現しないことがわかり,模様の発生は重力流の不安定により生じる転波の出現により決定することを示した。フルード数とは,流体の慣性力と重力との比を表す無次元数で,主に水面に生じる波の状態を表す際に使われる。

研究グループは,この結果は,ビールに含まれる泡の運動を理解する以外にも,泡や粒子が介在する工業分野やタンパク質の結晶成長や細胞培養などのライフサイエンス分野における流れの理解と制御に役立つことが期待できるとしている。

その他関連ニュース

  • 東大ら,LPGで蛍光が増す分子センサーを開発 2019年09月18日
  • 遺伝研ら,蛍光で魚の睡眠シグネチャーを発見 2019年09月05日
  • 東大,前立腺がんを光らせる蛍光試薬を開発 2019年08月30日
  • 千葉大,タンパク質の分解量を蛍光で簡便解析 2019年08月26日
  • 阪大,耐酸性光スイッチ型緑色蛍光たんぱく質を開発 2019年08月21日
  • 理科大ら,イネの細胞でオートファジーを可視化 2019年08月19日
  • 名大ら,炭素線の飛跡を照射中にリアルタイムで画像化 2019年08月09日
  • 東大ら,蛍光を高度に発現するウイルス作出に成功 2019年08月05日