阪大ら,SmB6の表面金属状態の起源を解明

大阪大学,自然科学研究機構分子科学研究所,東北大学,高エネルギー加速器研究機構,広島大学,茨城大学らの研究グループは,電子間の強い多体効果(強相関)の1つである近藤効果によって半導体になる6硼化サマリウム(SmB6)の単結晶において,表面金属状態の起源がトポロジカル絶縁体のものと同じであることを明確に示した(ニュースリリース)。

SmB6は,近藤効果と呼ばれている電子間の多体効果により,結晶内部(バルク)では半導体となる物質群の1つで,「近藤絶縁体」と呼ばれている。しかしながら,その表面は金属的な性質を持っており,その原因は長い間わかっていなかった。

さらに,SmB6の金属的な表面電子状態が,電子状態の対称性にある種の「ねじれ」を持ち,その影響によって結晶端(表面)に特異な電子スピン構造を持つトポロジカル絶縁体(TI)であるか否かについても,明確な結論は得られていなかった。

今回の研究では,結晶劈開ができないためにこれまで得られていなかった斜めの面「(111)方位」のSmB6単結晶清浄面を,原子レベルで研磨した後に超高真空中で1400℃以上に加熱し作製した。電子回折実験により,平坦かつ清浄な表面構造が作製できていることを確かめた。

さらに,得られた(111)面の電子状態を角度分解光電子分光(ARPES)により観測し,その電子スピン構造をスピン分解ARPESにより調査した。色の明るい部分に電子が多く存在(フェルミ面)し,結晶表面の周期性を反映した六角形の境界の頂点で互いに接するような,単純な楕円形リングの花弁のような構造をしていることが明らかになった。

今回の測定条件ではSmB6のバルクには伝導電子は存在しないので,得られたフェルミ面はバルク以外,つまり表面由来であることがわかる。さらに,今回の(111)表面では,表面電子状態の作るフェルミ面は1種類の楕円形だけによる単純な構造であることもわかった。

このフェルミ面上にいる電子のスピンの向きをスピン分解ARPESで観測したところ,丁度楕円の接線方向を向くような渦巻き型の構造を取ることも明らかになった。これらの特徴は,SmB6がTIである場合に予測されていた表面電子状態の振る舞いと一致するという。

今回,これまで観測されていたものとは違った方向からSmB6の表面電子構造を観測することで,単純かつ理論との比較が容易な表面電子状態を発見することができた。この結果は,SmB6が近藤効果とトポロジーが共存した物質(トポロジカル近藤絶縁体)であることを強く支持するもの。

研究グループは,今回の研究が,強相関とトポロジカル物性の協奏の理解を大きく助けるばかりでなく,新たな量子材料として,次世代半導体素子におけるスピントロニクス技術などの応用に役立つと考えられるとしている。

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