レーザーとイメージング技術で隠れた障害物を可視化 – 「非視線方向イメージング」

通常のイメージングアプリケーションでは,カメラ(もしくはディテクター)と撮像対象の物体は直線上に配置する必要がある。しかしながら,最先端の研究によって,コーナーの先や障害物の背後にある物体を画像化する「非視線方向イメージング (Non-Line-Of-Sight Imaging)」の可能性が広がりつつあり,この概念も変わり始めている。これは,超短パルスレーザー,高感度カメラ,そしてコンピューターによる再構成法の組み合わせを用い,その物体の周辺で光を散乱させることで実現する。

● 非視線方向イメージングとは?
非視線方向イメージング法は,レーザーパルスを物体に向けて送り,物体から戻ってくる散乱光の飛行時間を利用して物体とディテクター間の距離を測定するLiDAR(光検出と測距)のそれに類似している。しかしながら,非視線方向イメージングではこのプロセスにもう1つ別の散乱を加えることで,障害物に遮られた物体(標的)を画像化する。


Figure 1. 障害物によって遮られた標的(自動車)を画像化するため,超短パルスレーザーを標的近くの物体(壁)に送る(左図)。壁に当たったレーザーパルスが散乱し,その散乱光が標的に向かう(中央図)。標的で2度目の散乱を起こし,その散乱光は壁に向かって戻る。この2度目の散乱光を高感度カメラが検出する(右図)。

 
● 隠れた標的のモデルを再現
ピコ秒やフェムト秒の光の伝播をリアルタイムで測定するためには,単一光子アバランシェフォトダイオードカメラアレイなどの高感度カメラが必要になる。このディテクターは,光が直接壁に当たって散乱した時の最初の信号と,光が標的に当たって散乱した時の二番目の信号を受け取るが,非視線方向イメージングにはこの二番目の信号が使われる。

この信号の飛行時間の情報を用いて,隠れた標的上の特定ポイントで全て重なり合ういくつもの楕円体が再現され,コンピューターのソフトウェアがカメラと隠れた標的間の距離を計算してその3Dモデルを再構成する。

3Dの物体は,光を散乱するいくつもの独立したポイントの集合体に分解できる。そして,これらのポイント全ての総和によって,元の物体のモデルを再現することができる。例えば,ディテクターが100psの時間的分解能で戻り光のパルスを識別可能な場合,これは隠れた標的では約1.5cmの空間分解能に相当する。

● 現実世界のアプリケーション例とそのメリット
[自律走行車]
曲がり角の先にいる車や歩行者が直接視界に入る前に,車が検知可能に。
[公共の安全性向上]
警察,消防,救急医療サービスなどが,危険な状況にある人々の状態を安全な距離から検知することが可能に。
[医用イメージング / 顕微鏡学]
システムの視線に直接入らない,隠れた小さな3D構造を調べることが可能に。

● 非視線方向イメージングの未来
この新しい技術を用いて,携帯可能で,観察者の目に危険を及ぼすことなく現実世界で利用可能な実用製品を作ることは非常に難しい。非視線方向イメージングにとって大きな課題の一つは,ディテクターに戻る光の量が限られていることだ。

ディテクターは,この非常に少ない量の光を検出し,周囲にある他の光源と区別しなくてはならない。ディテクターへのリターン信号は二つの連続した散乱の結果のため,損失は非常に大きくなる。1レーザーパルス当たりのリターン信号は,僅か1光子分の少なさになる可能性がある。

しかしながら,米国スタンフォード大学のComputational Imaging Labは,間接太陽光の下,屋外でも機能する非視線方向イメージングシステムを開発し,壁に遮られた再帰反射テープで作られた物体の画像取得に成功。また,米国セントラルフロリダ大学のAristide Dogariu研究所は,壁とその背後にある標的に当たって散乱するレーザー光の代わりに,その壁に当たる光の空間コヒーレンスを利用する研究を進めている。

非視線方向イメージング技術が実用的な商用システムとして利用可能になるまで更に多くの開発が必要だが,次世代のイメージングアプリケーションにとって期待が寄せられるソリューションだ。

● エドモンド・オプティクスの非視線方向イメージング用オプティクス
エドモンド・オプティクスは、非視線方向イメージングに用いられるイメージングレンズと超短パルスレーザー用オプティクスを設計・製造している。

高性能イメージングレンズ
超短パルスレーザーミラー
2μm 高分散広帯域超短パルスミラー
超短パルス分散プリズム
超短パルス薄膜偏光板
800nm 高分散超短パルスミラー
1030nm 高分散超短パルスミラー
1030nm 高分散広帯域超短パルスミラー

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