名大,LEDと分子触媒で新しい炭素結合に成功

名古屋大学は,合成化学で50年以上に渡り研究され,汎用されてきたシリルエノールエーテルの新しい化学反応を実現した(ニュースリリース)。

シリルエノールエーテルは,ケイ素原子(Si)と酸素原子(O),炭素原子(C)がSi–O–C=C(=は二重結合,–は単結合)と配列した分子の総称で,天然物や医薬品の合成に幅広く利用されてきた。

また,シリルエノールエーテルはSi–O–C=C配列の右側の炭素原子上で,さまざまな分子と結合をつくる反応を起こし,カルボニル化合物と呼ばれる有用な物質を与える。しかも反応性が高い上,望ましくない副反応をほとんど起こさない(化学選択性が高い)という利点がある。

カルボニル化合物は,アミノ酸やタンパク質といった身近な分子や医薬品などにも含まれており,その合成技術の向上は創薬をはじめとする諸分野の進展を支える重要な成果となる。

反応性と化学選択性に優れているシリルエノールエーテルは,天然物に見られるような非常に複雑なカルボニル化合物の合成や化学変換にも応用できるが,そのために必要となる複雑な構造のシリルエノールエーテルを合成すること自体が困難であるという本質的な問題があった。

研究グループは,,光レドックス触媒反応と呼ばれる光エネルギーを化学反応のエネルギーへと変換する技術を用いることで,新反応を開発することに成功した。今回の研究では青色LEDをエネルギー源として用いた。可視光の利用には,高エネルギーの紫外線を必要とせず温和な条件で反応を行なうことができるという利点がある。

この青色LEDの照射下で適切な光レドックス触媒と塩基触媒を同時に用いることにより,シリルエノールエーテルのアリル位と呼ばれる位置の炭素-水素結合が開裂し,ラジカルという反応性の高い化学種が発生することを発見した。このラジカルを起点に新たな炭素-炭素結合をつくることで,複雑な構造をもつシリルエノールエーテルへの変換を実現した。

今回の手法で得られる生成物は,従来のシリルエノールエーテルとしての性質を残したままで,天然物に見られる複雑かつ多様なカルボニル化合物へと容易に変換できる。また,エストロン(ステロイドホルモンの1種で,複雑な構造のカルボニル化合物)の新規誘導体の合成にも成功した。

これにより,シリルエノールエーテルの最も反応しやすい炭素ではなく,本来は反応しない炭素上で,新たな結合をつくることができたという。研究グループは今回開発した反応を利用することで,天然物や医薬品に見られる複雑な有機分子の合成や,新薬候補化合物の新しい誘導体探索を迅速に行なうことが可能になるとしている。

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