東工大ら,反強磁性秩序の超高速ダイナミクスを光で追跡

東京工業大学は,スイス チューリヒ工科大学と共同で,反強磁性秩序の超高速ダイナミクスを3次元的に追跡可能な手法を開発した(ニュースリリース)。

反強磁性体は互いに反対方向を向く2つの磁気副格子からなり,正味の磁化が消失している。このことから反強磁性体の磁化は,磁気ドメインからの漏れ磁場や外部磁場に対して堅牢となっている。

また,磁気副格子間に働く強い交換相互作用により,強磁性体と比べて数桁高い共鳴周波数を示す。これらの理由により,次世代の超高速スピントロニクス材料として有望視されている。

しかし,正味の磁化が消失している反強磁性体では,その3次元ダイナミクスを線形磁気光学効果だけで追跡することはできなかった。一方,非線形磁気光学効果は反強磁性体の基底状態を分光する強力な手法であることが知られているが,ダイナミクスにおいては反強磁性秩序と電子系の寄与の分離は事実上不可能とされてきた。

研究では,円偏光の励起光で反強磁性YMnO3内にマグノンを励起し,検出光のファラデー効果をバランス検出器(BPD)で,第2高調波発生を光電子増倍管(PMT)で同時検出するポンプ・プローブ測定を行なった。

実験においては,線形磁気光学効果と非線形磁気光学効果を適切に組み合わせる測定配置により,反強磁性秩序の超高速ダイナミクスを3次元的に捉えることに成功した。

具体的には,六方晶YMnO3試料において,円偏光フェムト秒パルスを励起光とし,逆ファラデー効果によって周波数95GHzのマグノンモードを励起した。このモードは試料面直方向に強磁性成分が振動し,面内で反強磁性成分が振動することが知られている。

そこで,面直方向の強磁性ダイナミクスは線形磁気光学効果で検出し,面内の反強磁性体ダイナミクスは対称性の変化に敏感な非線形磁気光学効果(第2高調波発生)で検出した。非線形光学信号では,マグノン励起が対称性の低下を伴うことを利用することで,反強磁性秩序と電子系を分離することに成功した。

研究グループはこの成果について,磁化スイッチングやスピン再配列など,スピンの3次元的な方向変化を伴う超高速現象を理解する上で重要な技術になることが期待されるとしている。

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