理科大ら,安定性の高い有機半導体素材を開発

東京理科大学,香川大学,千葉工業大学らの研究グループは,電子を取り込む性質を持ち,空気中で安定な新たな電子アクセプター骨格(TANC誘導体,C6OAHCQ)の開発に成功した(ニュースリリース)。

半導体として利用できる有機物質はまだ種類が少なく,空気中で安定なものや有機溶剤によく溶けるものは特に少ないため,その開発が待たれていた。

研究グループは新たな有機半導体として利用できる可能性のある,電子アクセプター骨格を開発した。今回の研究では,電子受容性をもつN-ヘテロアセン誘導体の1つ,空気中でも安定なN-ヘテロヘプタセンキノン(C6OAHCQ)を赤色の単結晶として得た。

この物質は,2つのテトラアザナフタセン(TANC)骨格で1個のベンゾキノン骨格を挟み込んだ構造を持ち,電子が欠乏した状態のN原子8個を含んでいる。このN原子が電子の受容体としてはたらき,また,2つのカルボニル基を持つため,有機溶剤に良く溶ける。

C6OAHCQの特性をさらに調査するため,有機溶媒に溶解させた状態でUV-可視光吸収スペクトルや,電流・電圧曲線測定,静電ポテンシャルの理論計算を行なった。その結果を類似物質のものと比較したところ,C6OAHCQは同時に最大4つの電子を受容することができ,同様に有機n型半導体のC60(フラーレン)の最大3つの電子と比べ,電子受容力に優れていた。また,吸収スペクトルの結果からは,C6OAHCQが紫外線に晒されても安定であることが確認された。

さらに,ジクロロメタン溶媒に溶かして電流を流したところ,溶液の色が茶色から緑色に変化し,この物質が荷電によって可逆的に色調を変える,エレクトロクロミズムと呼ばれる性質を持っていることもわかった。

エレクトロクロミズムは,通電によって光の透過性を変え,透明ガラスを曇りガラスに切り替える「スマートウィンドウ」や,通電した部分のみに着色させて文字や絵を表示する「電子ペーパー」などに有用な性質で,C6OAHCQは半導体だけでなく,エレクトロクロミック素材としても利用できる可能性があるという。

今回の新素材は柔らかさなどこれまでの有機素材の利点は維持しながら,空気中でも安定で有機溶剤にもよく溶ける。研究グループは,既存の印刷技術を使って溶液を平面に塗布することで,衣類や体によりフィットしたウェアラブルデバイスなど,より自由な形状と新しい機能性を持つ半導体デバイスの開発に繋がるとしている。

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