理研ら,超精密中性子集束金属ミラーを開発

理化学研究所(理研),高エネルギー加速器研究機構,京都大学の研究グループは,金型用の超精密加工技術と金属多層膜の成膜技術を融合させ,金属材料のみで構成される中性子集束ミラーの開発に成功した(ニュースリリース)。

中性子ビームを湾曲したミラーで反射して試料に集める中性子集束ミラーを実現するためには,精密な曲面基板の上に「中性子スーパーミラー」と呼ばれる金属多層膜を成膜する必要があり,その基板には0.1nm級の滑らかさが求められる。しかし,従来はガラスやシリコンといった硬く脆い材料が採用されていたため,大型化や複雑形状への対応が困難だった。

今回研究グループは,無電解ニッケルリンメッキに着目した。このメッキはプラスチックレンズ金型のコーティングとして広く用いられているもので,アモルファス(非晶質)という特徴がある。アモルファスの無電解ニッケルリンメッキには結晶粒がないため,加工しやすい金属にもかかわらず,中性子スーパーミラーの要求を満たす超平滑面を容易に得ることができる。

そこで研究グループは,アルミ合金を大まかな形状に加工し,これに無電解ニッケルリンメッキの皮膜を付け,ダイヤモンド工具で形状を整えた上で研磨仕上げした。アルミナ研磨剤をエポキシバッドとスエードパッドで交互に研磨することで,うねりを約30マイクロラジアンまで低減し,さらに金属基板の表面はシリカ研磨剤を用いて,達成可能な限界の約0.1nmの滑らかさまで均一に研磨した。

さらに,その上に中性子スーパーミラー多層膜を成膜することで,さまざまな形状の中性子集束ミラーを製作する方法を確立した。金属基板は組み立てて接続することが容易であるため,複数の集束ミラーを接続して大面積化し,より多くの中性子ビームを反射して集めることができる。

次に,この方法を使って,実際に稼働中の中性子反射率測定装置に中性子集束ミラーを設置し,性能評価を行なった。この中性子集束ミラーの表面は楕円形となり,これを用いて0.05mm幅のスリットから出射した中性子ビームを,4.3m離れた位置で0.13mmの幅(半値全幅)のガウス分布状の領域に集束させることに成功した。

これは世界最高となる性能だという。この集束ミラーにより,小さな試料に大強度の中性子ビームを集束して照射することができる。現在は中性子反射率測定用のミラーとして実用化するための検討を行なっている。

また,金属は多種多様な形状に加工できるため,より複雑で高機能なミラーの開発につながる。具体的には,ナノ構造の空間的な分布を高分解能で捉えるマッピング計測や,顕微法を利用したイメージングまで,さまざまな測定への応用が考えられるという。

研究グループは,今回の研究成果は低速中性子ビームの輸送および集束手法を大きく変え,中性子ビーム利用の発展に大きく貢献するとしている。

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