産総研ら,レーザー加工プラットフォームを構築

産業技術総合研究所(産総研)と東京大学の研究グループは,深紫外光から,可視光,近赤外光にわたる波長域のフェムト秒レーザーが利用できる超短パルスレーザー加工オープンイノベーションプラットフォーム(Ultra-short pulse Laser Processing Open innovation Platform:ULPOP)を,産総研柏センター東京大学連携研究サイト(東京大学柏キャンパス第2総合研究棟)に構築した(ニュースリリース)。

レーザー加工は本来,材料の種類や目的形状,加工の種類(切削,切断,穿孔など)に応じて波長などの加工パラメータを適切に選ぶことにより,マイクロメートルスケールの高精細加工を実現する性能がある。しかし,波長を変えるには複数のレーザー光源と波長変換のシステムが必要となるため,さまざまな波長のレーザーを用いて加工条件の探索や最適化が一度に行なえる環境はこれまでなかった。

このプラットフォームでは,さまざまな材料や加工の種類に対する加工パラメータの探索と最適化を可能にするため,独自に設計した2種類のフェムト秒レーザーと2種類の汎用ナノ秒レーザーによる加工システムを整備した。

フェムト秒レーザー①では,基本波である中心波長800nmに加えて,非線形結晶により発生させた中心波長400nm,266nm,200nmの4つの波長を選択することができる。このうち,266nmと200nmのフェムト秒レーザーで材料加工用に利用できるプラットフォーム化された高強度のものは世界にも例がないという。

パルス幅は50~2000fsの範囲で可変(一部を除く)となっている。フェムト秒レーザー②は,波長800nmの光を光パラメトリック増幅器を用いて,近赤外光(1100~2300nm)の波長に変換して利用できる。ナノ秒レーザー①とナノ秒レーザー②は,それぞれ355nmと266nmの波長が利用できる。

こうした波長とパルス幅のバリエーションを有することから,工業材料や生体・医療材料を中心とするさまざまな材料を対象に最適な波長を選択することができる。また,このプラットフォームでは顕微鏡などの各種分析装置も整備されており,加工直後に加工状態を分析し,結果をフィードバックすることができるという。

現在,このプラットフォームへの技術相談は随時可能で,今後,共同研究や技術コンサルティングといった産総研の連携制度に基づき,企業が求める多様な材料に応じたレーザー加工条件の探索や最適化を行なうことで,産業利用を支援する。

このプラットフォームの詳細は,2019年10月10日に富士ソフトアキバプラザ(東京都千代田区)で開催する先端オペランド計測技術シンポジウムにて紹介する。

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