筑波大,クシクラゲの光を生む分子を解明

筑波大学と基礎生物学研究所の研究グループは,虹色に輝くクシクラゲの櫛板を形作っている分子を世界で初めて明らかにした(ニュースリリース)。

クシクラゲは,光の加減によって虹色に輝く「櫛板」を持つ。各櫛板は数万本の繊毛が束ねられて板状になった船のオールのような構造をしている。櫛板は体表に8列存在し,これを波打つことで体の向きを変えたり,移動したりする。

繊毛は,直径0.2μの小さく目に見えない細胞の毛で,クシクラゲではこれが多数束になることで,大きさが1mmにも達し,肉眼で見えるくらいに巨大化している。繊毛が規則正しく配列することにより,タマムシやクジャクの羽のように,反射する光が干渉し合って構造色を出し,虹色に輝く。

数万本の繊毛が束化し,協調的に運動するためには,繊毛の方向を揃えながらつなぎとめる必要がある。クシクラゲの櫛板には,繊毛をつなぎとめる compartmenting lamella(CL)とよばれている,他の生物には見られない特徴的な構造があることが知られているが,これまでその実体は明らかにされていなかった。

研究グループは,クシクラゲの一種である「カブトクラゲ」の室内繁殖と長期飼育を行ない,カブトクラゲの櫛板を単離する生化学的手法を確立した。また,RNA-seqと呼ばれる手法で,カブトクラゲの遺伝子カタログを構築した。

このカタログを参照データベースとして利用し,単離した櫛板に含有されるタンパク質を質量分析装置によって同定した。その結果,クシクラゲを特徴づける櫛板のみに存在するタンパク質CTENO64 (CTENOは櫛,64はタンパク質のサイズ)を明らかにした。CTENO64は,有櫛動物の仲間だけが持っているタンパク質であることも見出した。

さらに,CTENO64は,CLの根元領域に存在することがわかった。実験的にカブトクラゲ幼生のCTENO64を欠損させ,櫛板の運動がどのようになるかを調べたところ,櫛板が打つ波の方向や平面性が失われ,正常に移動できなくなることがわかった。

つまり,CTENO64は,櫛板内の繊毛の方向をそろえ,正常に波打つために必要で,クシクラゲ自身の移動にも重要な役割を果たしていることがわかったという。

研究グループは,今回の研究の成果は繊毛の機能だけでなく,動物の進化を知る上で重要な知見となる。クシクラゲの櫛板は,光の方向や強度を自由に制御できるフォトニック結晶の性質を有していることが報告されていることから,光学分野への新たな応用の可能性も期待できるとしている。

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