中部大ら,餌から発光酵素を得る魚の仕組みを解明

中部大学,米モントレー湾水族館研究所,名古屋大学の研究グループは,魚類で初めて,ルシフェラーゼの由来の解明に成功した(ニュースリリース)。

キンメモドキが発光することは50年前の論文以降,誰からも報告されていなかった。研究グループは,水族館の協力で得た健康なキンメモドキを用いることで,世界で初めて,その発光の様子をカメラに収めることにも成功した。

発光の行動観察から,キンメモドキは発光することによって,月明かりなどの海面から届く弱い光で出来る自分の影を消し,海底から敵に見上げられた時に見つかりにくくしている(カウンターイルミネーション)と考えられる。

生物の発光反応は一般に「ルシフェラーゼ」と総称される酵素タンパク質と「ルシフェリン」と総称される化学物質による生化学反応であると説明できる。研究グループは,このキンメモドキの発光器から,ルシフェラーゼを精製したところ,トガリウミホタルCypridina noctilucaのルシフェラーゼ由来と考えられるペプチドを検出した。

この結果は,発光色のスペクトル解析やウミホタルルシフェラーゼ抗体を用いたウェスタンブロット(抗体を使って抗原タンパク質の有無を検出する実験手法),免疫組織化学による組織観察などの実験からも確かであることが支持された。

魚類のルシフェラーゼが甲殻類のルシフェラーゼと同一のものであることは考えられず遺伝子的な解析を行なったが,キンメモドキはウミホタル類のルシフェラーゼ遺伝子を持っていないことが示唆された。

そこで,キンメモドキは餌からルシフェラーゼを獲得しているのではないかという仮説を立て,検証した。餌であるウミホタル類を与えられずに長期間飼育すると,キンメモドキの発光能力が徐々に低下していくことが見出された。その後,その飼育個体に,ウミホタルVargula hilgendorfiiを与えたところ,ルシフェラーゼ活性が回復することを見出した。

この個体からルシフェラーゼを解析したところ,野生種が持っていたトガリウミホタルではなく,餌として与えられたウミホタルのルシフェラーゼであることがわかった。これらのことから,ウミホタルからルシフェラーゼを盗むという方法で発光能力を進化させたことがわかった。この「盗タンパク質 kleptoprotein」という現象は生物の発光に限らず,全ての生命現象を含めて,世界で初めての研究成果だという。

研究グループは,生物が持つこれらの仕組みを解明し,それに習う(バイオミメティクス)ことで,様々な応用展開(タンパク質性医薬品の経口投与方法の開発などの医学分野への貢献)も期待されるとしている。

その他関連ニュース

  • 筑波大,クシクラゲの光を生む分子を解明 2019年10月15日
  • 龍谷大,光でシロアリの翅の表面構造を再現 2019年08月07日
  • 東大ら,豪の海底洞窟で光るクモヒトデを発見 2019年08月05日
  • 産総研ら,紫外線を反射するトンボのワックスを再現 2019年01月16日
  • 広島大ら,グアニン結晶板の制御に成功 2018年11月20日
  • 産総研,人工生物発光酵素に選択的な発光基質を開発 2017年12月12日
  • 名大ら,鳥を参考に構造発色性顔料と光学デバイスを構築 2017年05月01日
  • 京大,生物を模倣して炭素ナノリボンを合成 2016年09月28日