岡山大,ギャップ持つトポロジカル超伝導体発見

岡山大学の研究グループは,エネルギーギャップを持つトポロジカル超伝導体CuxBi2Se3(x>0.46)を発見した(ニュースリリース)。

従来の導電体は,表面と内部のトポロジーが同じで,表面も内部も同様に電気を流す。しかし,トポロジカル絶縁体は,電子を記述する波動関数に「ひねり」があり,内部では電気が流れないが表面は電気を流すという性質を持っている。これは,エネルギーギャップが完全に開き,かつ「ひねり」がある内部が,真空(「ひねり」がない)と接続するためにはギャップのない表面状態を作らなければならないためとなる。

トポロジカル絶縁体の表面に流れる電流は従来の導電体に比べてエネルギーロスが少ないなどの特性があり,産業への応用面でも注目を集めている。同様に,完全にギャップが開いたトポロジカル超伝導体でも特徴的な表面状態が現れる。この表面状態は「マヨラナ粒子」状態と呼ばれ,量子コンピューターなどの次世代デバイスへの応用が期待されている。

研究グループは,トポロジカル絶縁体であるBi2Se3 のSeの層間に,高濃度の銅(Cu)を挿入することによって,特異な超伝導体を合成することに成功した。2016年にCuを30%程度挿入したCu0.3Bi2Se3において,トポロジカル超伝導状態が実現することを世界で初めて証明したが,その物質はギャップが完全には開いていなかった。研究グループは今回初めてその作製と証明に成功した。

まず電気化学法によって単結晶を合成し,ミクロな状態を測定できる核磁気共鳴や磁化測定・電気測定を駆使して研究した。この物質はSeまたはBi原子が六角形の構造をしており,SeまたはBi原子が作る面内では三回対称性を持っている。

また核磁気共鳴法を用いて,超伝導を担う電子対がスピンを平行にして対を作る「スピン三重項超伝導状態」を証明し,トポロジカル性を確立させた。さらに,「上部臨界磁場」などの物理量がCu濃度とともに劇的に変わることを発見した。

具体的には,Cu濃度が40%以下だと,物理量が二回対称性を示すが,40%以上だと物理量が方向に依らなくなること(等方性)を見出した。二回対称性はエネルギーギャップの開かない場所があることを意味し,等方性は全(運動量)方向にギャップが開くことを意味するという。

この研究成果はトポロジカル超伝導研究を大きく前進させるとともに,量子コンピューターへの応用に道筋を付けたものとしている。

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