産総研らの玉虫塗保護層,ヘルメットに採用

産業技術総合研究所(産総研),宮城県指定伝統的工芸品「玉虫塗」を製作する東北工芸製作所の研究グループは,工芸品の活用範囲を広げる粘土含有ナノコンポジット保護層を開発した(ニュースリリース)。

漆器は国際的に高く評価されているが,漆器に限らず塗料は一般に表面が柔らかく傷がつきやすい,紫外線によって色が褪せるなどの問題を持っている。

粘土などの細かな無機粒子を均一に樹脂と混合すると樹脂と無機粒子のネットワーク構造が形成され樹脂の硬度が上がる。無機粒子が樹脂中にナノメートルレベルで均一混合すると,無機粒子と樹脂の界面で可視光が散乱せず透明なコンポジット材料にできる。

多くの色の塗料に対して適用できることから,透明性をもち,かつ簡単なプロセスによりさまざまな形状の製品に使用できる保護層の開発が求められていた。

今回,玉虫塗ナノコンポジットをヘルメットに適用するため,研究グループは種々の組成の保護層用塗料を比較評価し,透明ウレタン樹脂に透明な粘土である合成スメクタイトを添加したものを採用した。

ウレタン樹脂に混ざりやすくするため,有機物で合成スメクタイトの表面を覆った有機化粘土を用いた。ウレタン樹脂の硬化には,加熱・紫外線照射などの硬化プロセスは適用しなかった。

ウレタン樹脂への分散性が不十分だと粘土がだまになり,これが白い粒として認められ美観が損なわれる。研究グループは三種類の有機化粘土を含む粘土素材を候補とし,添加量の最適化を行ってウレタン樹脂と混合した結果,だまが発生せず表面硬度を上げられる粘土素材とその添加量を見いだした。

さらに,この材料を玉虫塗の保護層としてスプレー塗工で付与できることを確認するとともに,さまざまな立体形状の製品に適用できる製造プロセスを確立した。

これにより,十分な外観・性能の玉虫塗ナノコンポジットヘルメットを製作することができた。このヘルメットは5カ月間に亘る屋外での太陽光暴露試験を行ない,色褪せがないことを確認したという。

また,この玉虫塗ナノコンポジットヘルメットは楽天イーグルスの選手用ヘルメットとして,2020シーズンより正式採用が決定している。

その他関連ニュース

  • 名工大,形状記憶が可能な透明エポキシを開発 2020年06月18日
  • 産総研ら,光で剥がせるジェルネイルを開発 2019年10月29日
  • 浜松ホトニクス,マイクロPMTをパッケージ化 2019年09月03日
  • OIST,ペロブスカイト太陽電池の汚染防止材を発見 2019年06月19日
  • 阪大,光でポリプロピレン表面を機能化 2019年04月27日
  • NTT-AT,無溶剤系高屈折率ナノインプリント樹脂を開発 2019年02月19日
  • 2018年の耐熱,透明・光学ポリマー市場は5兆8,697億円 2018年07月27日
  • 住友化学ら,PMMAベースの軽量丈夫な透明樹脂を開発 2018年06月26日