Photonics West 2020【展示会現地報告「初日」】

世界最大級の光学関連展示会・国際会議であるPhotonics West 2020が2月5日~7日,アメリカ・サンフランシスコのThe Moscone Centerで開幕した。前回に続き,編集部では展示会を中心に取材を行なっており,その詳細は「Photonics West 2020 報告書」に纏める予定となっている。ここでは取材した出展社のいくつかについて,その展示内容を簡単にレポートする。

カナレ電気(日本)
独自の方式によるビームプロファイラーを展示している。従来のビームプロファイラーはCCDの前にフィルターを多数設け,レーザーのパワーを落として測定を行なっている。しかし,この方式はフィルターの破損や変形によって正確な測定が行なえなくなる問題があった。

これに対し同社は,蛍光体にレーザーを当てて微弱な蛍光を取り出す一方で,レーザーの99%をミラーではじく方式を開発した。これにより,パワーの大きなレーザーでも正確なビームプロファイルを取得することが可能となった。

Coherent(アメリカ)
テラヘルツラマン分光のモジュールとコンパクトなフェムトセカンドレーザー,及び溶接用のレーザーヘッドの展示に力を入れていた。

テラヘルツ領域を使ったラマン分光では,分子内の原子間振動の他に,より低周波数の振動・回転を観察する事が可能となるので,分子同士の結合状態,結晶格子,フォノン状態を観察する事ができる。

医薬品等は,分子式が同じでも格子配列の差で作用が変わる事もあるので,テラヘルツラマン分光の応用分野の一つとして期待されている。また,この波長領域のラマン散乱の強度は,可視光領域よりも強いので,微量ガスの分析にも応用が期待できるとしている。

テラヘルツ光源として安定なシングルモードレーザーを開発し,同時に光学系の中に4つのシャープなフィルターを配置する事で,今回のテラヘルツラマン分光モジュールの開発に成功した。

マルチ光子顕微鏡への応用として,非常にコンパクトなフェムトセカンドレーザーの展示も行なっていた。Air Cooled,Compact,Low Costが売りで,すでに920nm,1064nmは商品化済みとなっており,さらに近赤外領域の波長帯も今年中に商品化するとしている。

ファンレスの空冷で,これまでにないコンパクトな筐体,それによって実現されたコスト低減により,2光子顕微鏡のアプリケーションの対象が,理科化学用途からより商業ベースなものに広がる事を期待しており,この利便性が向上した筐体により,日本を含めた2光子顕微鏡メーカーの採用につながると考えている。

その隣のコーナーでは,特殊なセンサーを備ええることで,特に車の製造工程での実用性を高めた溶接用のレーザーヘッドを展示していた。センサーが溶接する二つの金属間の曲がり具合やギャップを検知しながら,ヘッドが動き,常に最適な条件で溶接を行なう事を可能としている。

この技術に加えて,二つの異なるビームパターンのレーザー光を照射することにより,ホットクラックを防ぎながら溶接を行なう技術を導入している。アメリカやドイツの車メーカーに加え,日本のメジャーな自動車関連メーカーにも採用が進みつつあるとしている。

サークルアンドスクエア(日本)
樹脂レンズの切削加工による試作品開発について技術紹介を行なっている。通常必要な金型を使用しないので最短3日~という短納期と,一度に複数の試作が可能となる柔軟性を両立し,サイズにもよるが,PV≥1μm,Ra≥20nmという加工精度を実現するという。

CNC工作機械の条件出しを詰めることで非球面レンズの他,様々な超精密形状加工が可能で,写真のドーム型ケース内にある鶴の極小模型は高さ1.5mm,足の幅50μmで作成している。

Acktar(イスラエル)
同社は流行の黒色コーティングを手掛けている。希望する製品を送ってもらい,コーティング加工を施すサービスを行なっており,吸収波長帯やコーティングの厚さなど様々なパラメーターを備えたラインナップを揃える。

シート状の製品も用意しており,素材としては吸収波長帯によりアルミニウム,ポリイミドとなっている。日本法人もあることから,国内からのアクセスも良好となっている。

eLu Inc.(台湾)
マイクロLEDディスプレーで大変にユニークな展示をしていた。同社ではLEDを並べるのにマイクロLEDチップが多数入っている液体を使うというユニークな方法を用いている。その詳細については会期2日目のカンファレンスで発表があり,「Photonics West 2020 報告書」にも掲載予定である。

これまでの製法では,マイクロLEDを正確かつ個別にボンディングしなければいけなかったが,この方法によって生産性を格段に上げることが可能になるとしている(彼らはこの技術をSelf Assemblyと呼んでいる)。

展示していた試作品のディスプレーの解像度は520×1000で,LEDのピッチは0.6mmだとしている。ただし,0.15mmまで小さくできる実績があるという。このメーカーにかぎらず,今年は台湾からのマイクロLEDの展示が多かった印象だ。