北大,分子の酸化特性を加熱/冷却で制御

著者: higa

北海道大学の研究グループは,加熱/冷却により分子の構造(存在比)を変化させることで,酸化特性の制御に成功した(ニュースリリース)。

有機化合物は,炭素,水素,酸素,窒素,あるいは硫黄といった原子で構成され,これらの原子が互いに結合することで有機分子を形作る。この化学結合は,物質を創る最も基本的な要素であり,その長さや結合角は基本的に決まった値を示す。

例えば,炭素=炭素二重結合は平面構造をとることが広く知られている。一方,大きな置換基が複数置換することで折れ曲がり構造やねじれ構造といった,通常とは異なる構造をとることも報告されている。このような高歪み化合物の特長として,光や熱,あるいは別の刺激によって構造や機能が可逆的に変化する可能性があり,研究者の注目を集めてきた。

これまでの報告例では,折れ曲がり構造が安定形であることが多く,ねじれ構造を発現させるには,三環性の置換基を複数連結するといった分子設計が必要だった。この研究では,これまでとは違ったアプローチでねじれ構造を発現させ,折れ曲がり構造との構造変化により新規応答性分子の創出を目指すこととした。

研究グループは,炭素=炭素二重結合の周囲に適度な大きさの置換基を複数連結することで,折れ曲がり構造とねじれ構造の両方をとり得る分子を新たに設計した。

これは,基本的には折れ曲がり構造のみをとる一方,ある条件下ではねじれ構造の存在比が増すことを狙ったもので,実際に,X線結晶構造解析では折れ曲がり構造のみ観測されたが,溶液中では折れ曲がり構造とねじれ構造間の速い構造変化が示唆された。

また,温度可変スペクトルから,低温溶液中では折れ曲がり構造のみが存在しているのに対し,室温より高温ではねじれ構造が一部生じていることを明らかにした。さらに,このねじれ構造は折れ曲がり構造よりもはるかに酸化されやすいことも見出した。

これにより,温度変化による分子構造変化を実現し酸化特性の制御に成功しただけでなく,ねじれ構造は開殻のラジカル種であることも明らかにし,温度が上がるにつれてその比率が増大することも示した。このような有機ラジカル種は,磁性材料といった応用面でも注目されており,新規材料の開発が期待されるとしている。

さらに,研究グループはごく最近,光/熱による完全な構造スイッチングを実現し,それによる酸化特性制御も実現した。これらの研究成果により,酸化還元活性な高歪み化合物による特異な分子構造が新たな機能創出の鍵となることを示したとしている。

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