がん研,内視鏡動画のデータ化プロジェクト開始

国立がん研究センター(がん研)は,人工知能(AI)を用いた手術支援システムの導入に向けた,開発基盤を整備するため,産業利用可能な高品質の手術動画データベースを構築するプロジェクト「S-access Japan(サクセスジャパン)」を開始した(ニュースリリース)。

従来の手術は,術者の経験・知識に基づく技量や判断により行なわれており,高度な技能が要求される内視鏡外科手術では,施設間・術者間の治療成績の格差が報告されている。

このプロジェクトは,全国の医療機関や日本内視鏡外科学会と連携し,3,000例の手術動画を収集する国内初の試みとなる。熟練した技術を持つ外科医が,どのように安全かつ効率的に手術を進めているか意味付けすることで,「S-access Japan」ではこれらの質の高い教師データを含む大規模なデータベース構築を目指す。

3年間のプロジェクト実施期間内に,開発に取り組む項目は以下の通り。
1.AI手術支援システムの開発環境整備
クラウド上で機械学習等に必要な膨大なデータ量を確保するため,名古屋大学や産業技術総合研究所と共同による,アノテーションや解析・計算を効率的に実施可能にする環境を整備する。

2.臨床データ収集とデータセット作成
日本内視鏡外科学会と連携し,全国の医療機関から下記のデータ収集を行なう。集められた動画を東病院で1コマの画像毎にアノテーションを行ない,「手術工程」や「術具」などの情報が意味付けされたデータセットを作成する。
・内視鏡手術動画で収集する対象臓器名及び研究開発分担施設名:下部消化管(結腸・直腸)/京都大学,肝胆膵(肝臓・胆道・膵臓),上部消化管(胃)/大分大学,前立腺/千葉大学
・手術動画に付随する情報:臨床情報,術者情報

3.持続可能なデータベース運営体制の構築
臨床情報・術者情報を有する大規模な手術動画データベースは,医療機関・アカデミア・企業とで共有し,産業化を目的とした開発等に活用可能にする。そのため,臨床側からの継続的なデータ提供と,データベース運営が持続可能となる運用体制を目指す。

質の高い教師データを含むデータベースは,AIを用いた手術支援システムの開発基盤となる。産業化が実現されることにより,術中の外科医を支援するプロダクト(製品)の開発が期待でき,将来的に術者の指示を正確に遂行する手術支援ロボットが創出される可能性がある。これにより,施設間・術者間格差が是正され,外科治療の質の改善が期待されるとしている。

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