東大ら,蛍光プローブで酵素の1分子検出に成功

東京大学,理化学研究所,名古屋市立大学,国立がん研究センターらの研究グループは,血液中の酵素を「1分子」レベルで区別して検出する新たな方法論を開発し,疾患と関わる酵素活性異常を超高感度に検出する病態診断法の可能性を示した(ニュースリリース)。

生体内には,数千種類を超える酵素が存在し,これらの中にはさまざまな疾患の発生と関連して活性異常が起こるものもある。血液中の特定の酵素活性の異常を知ることは,疾患の有無を判断する際の指標(バイオマーカー)として広く用いられている。

しかしながら,現在,血液中の酵素を検出する方法論では,その感度の不十分さから血液中にごく微少量で存在する酵素を検出することが困難である場面がしばしば見られ,特に,疾患の早期診断に関わる酵素活性異常を見つけるためには,このような酵素の活性検出法の高感度化が求められている。

既に確立されている1分子酵素活性計測法は,希釈した酵素の溶液を数十フェムトリットルスケールのごく微小な反応容器が数十万個連結したマイクロチップ内に封入し,この中での酵素反応を観察することで1分子レベルの酵素活性を検出する。

しかしながら,この1分子計測法は、マイクロチップ内の個々の反応容器にどのような酵素が導入されているかが分からず,類似の活性を持つ酵素を見分けられないという問題があり,数千種類を超える異なる酵素が含まれるサンプル中で,選択的な酵素活性評価をおこなうことは困難だった。

研究グループは,個々の酵素が持つ活性の違いを見分けることによって、反応容器内の酵素の種類を区別するというアイデアを考案し,複数の異なる色の有機小分子蛍光プローブを用いて,これらの活性の違いをパラメーター化することで分離検出をおこなう方法論を確立した。

実際に3色の異なる波長を持つ蛍光色素を合成し,新たに蛍光プローブ群を開発して組み合わせることで,これまで困難であった配列相同性が高いサブタイプのわずかな反応性の違いを見分けて検出可能であることを確かめた。これらの酵素の1分子レベルの検出を血液中で実現したのは世界で初めてのことだという。

研究グループは今後,この手法を用いてさらなる疾患バイオマーカー候補の発見や,これに基づく新たな疾患診断法の確立につながることが強く期待されるとしている。

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