理研ら,99Zrの励起状態の核磁気モーメント測定

理化学研究所(理研),大阪大学,東京大学,東京工業大学,仏 国立科学研究センター(CNRS/CSNSM),仏 原子力・代替エネルギー庁(CEA),独 重イオン加速器研究所(GANIL)の研究グループは,中性子過剰なジルコニウム(Zr)同位体である99Zr(陽子数40,中性子数59)の励起状態の核磁気モーメント測定に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

今回,研究グループは238Uビームの核分裂反応を用いて,核スピン整列した99Zrビームを生成した。スピン整列した99Zrの励起状態から放出されるガンマ線を測定し,その励起状態の核磁気モーメントを測定したところ,その値は球形形状と仮定したときの値から大きくかけ離れていることが判明し,この励起状態は球形でなく「変形」状態であることが分かった。

これまで,Zr同位体においては,偶数質量数の98Zr(中性子数58)と100Zr(中性子数60)の間で起こる基底状態の突然の形状変化が注目されてきた。今回の実験結果から,奇数質量数のZr同位体でも,97Zr(中性子数57)と99Zrの間で励起状態の形状が突然変化していることが分かった。

この研究では,偶々核の基底状態における形状変化が注目されているZr同位体の変化の境界に位置する99Zrの励起状態の核磁気モーメント測定を行ない,スピン7/2を持つ励起状態でも形状変化が起きていることを示した。

今後の実験・理論の双方の進展により,Zr同位体における変形現象の包括的な理解が進むはずだという。例えば,今回注目したスピン7/2を持つ励起状態に対して,変形をより直接的に反映する核電気四重極モーメント(原子核の電荷分布を反映する量)をRIビームファクトリー(RIBF)の大強度ビームを用いて測定するなど,さらなる実験的検証が次の目標となる。

RIBFとは,RIビーム発生系施設と独創的な基幹実験設備で構成される世界最先端の重イオン加速器施設。1基の線形加速器,4基のリングサイクロトロンと超伝導RIビーム分離装置(BigRIPS)で構成される。従来生成できなかったRIも生成でき,世界最多の約4,000種のRIを生成する性能を持つ。

また,偶々核の励起状態や遷移確率だけではなく,奇数質量核の核磁気モーメントや電気四重極モーメントも含めて多角的に測定を行なうことで,さまざまな特異性を持つ原子核の形状や構造の理解につながる多くの成果が得られるとしている。

その他関連ニュース

  • NIMSら,Si基板上に単結晶巨大磁気抵抗素子作製 2020年05月29日
  • 慶大ら,音波を用いた磁気回転効果を発見 2020年05月28日
  • 理研ら,過去最小となる磁気渦粒子を発見 2020年05月19日
  • 阪大ら,歪みで半導体中のスピン寿命を延長 2020年05月18日
  • 早大ら,無機固体中の電子の相転移を発見 2020年05月12日
  • 東大,熱平衡化しない数理モデルを無限に構成 2020年05月12日
  • 京大,スピン波の巨大な非相反性の制御に成功 2020年04月30日
  • 東北大ら,磁性体3次元らせん状の磁気構造可視化 2020年04月27日