工学院ら,200nm以下のUV半導体材料を開発

工学院大学,京都大学の研究グループは,水銀(Hg)や希ガス(アルゴン,クリプトン,キセノンなど)の放電を用いることなく,200nm以下の短い波長を含む深紫外線を発光可能な半導体材料の開発に成功した(ニュースリリース)。

半導体を用いて小型,低消費電力,任意波長での紫外線の発光を目指す研究が盛んとなっている。その材料として,窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)の進展が進み,波長210~220nmの発光ダイオード(LED)も実証されている。

しかし,実用化にはさらに効率の高い発光を得る必要があるほか,通常環境下でAlGaNから得られる光の波長はおよそ210~365nmであり,200nm以下の光を得ることはできない。より波長の短い光を得るには,よりバンドギャップの大きい半導体の開発が必要となる。

そこで,研究では酸化マグネシウム亜鉛(MgZnO)に注目した。この材料から得られる光の波長は,理論的にはおよそ160~365nmと予想される。つまり,AlGaNでは不可能な領域を含み,広い波長範囲での紫外線の発光が期待されるという。

京都大学では,単結晶MgO基板の上にMgZnOを結晶成長し,欠陥の少ない薄膜の作製に成功した。この薄膜のMgZnO層では原子が規則的に整列した単結晶構造を持ち,欠陥はほとんど見られない。

また工学院大学では,MgZnOに電子線励起を行ない,発光の特性を調べた。波長200nm以下の領域では光が空気中の酸素に吸収されるので,測定系をすべて窒素ガスで置換する特別な装置を作製した。

MgZnO層のMgとZnの組成比に応じてそのバンドギャップが変化するため,室温(300K)において205~253nm,また6Kにおいて199∼244nmにピークを持つ発光が得られた。これはウィルス殺菌に望ましい波長で,AlGaNでは実現できない波長を含む。室温における発光の効率は2.4~11%で,単層の膜からの発光としては比較的大きい値と言えるという。

MgZnOは理論的には160nmまでの発光が可能となる。今後は,MgZnO膜の特性を向上させることで,200nm以下のより短波長での発光を目指す。また,実際のデバイスとしては,pn接合ダイオードにつなげることが理想的だが,バンドギャップの大きい半導体では電気特性の制御が一般に難しい。pn接合ダイオードに向けた研究を進める一方で,電子線励起,光励起,イオン・プラズマ励起によるデバイスを検討するとしている。

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