芝浦工大,光照射で銅微細配線をフッ素樹脂に形成

芝浦工業大学の研究グループは,光照射を利用したフッ素樹脂上への簡便な銅微細配線形成技術を開発した(ニュースリリース)。

5Gサービスが開始するなど,情報の大容量化と高速伝送が飛躍的に発展し,スマートフォンなど各デバイスは,それに対応する更なる処理性能が求められている。

伝送信号の高周波化が進む中,フッ素樹脂材料ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は誘電率と誘電損失が小さく,高周波領域において良好な誘電特性を持つ樹脂基板材料として大きく期待されている。

しかしPTFEは表面エネルギーが極めて小さく撥水性であるため,他材料との接合が難しく,PTFE上に配線やデバイスを形成することは困難だった。

この研究では,光照射とアンモニア水溶液を用いたフッ素樹脂の簡便な親水化法を開発するとともに,貴金属を用いないCu2+イオンを触媒とする無電解Cuめっき膜の作製と,独自開発した有機無機ハイブリッド膜を用いた銅微細配線形成技術の開発に成功した。

フッ素樹脂の親水化にはプラズマ処理など大がかりな真空装置を必要とする。一方,今回は入手しやすいアンモニア水溶液の蒸気中にフッ素樹脂基板を設置してエキシマ光を照射することにより,フッ素樹脂基板表面の親水化に成功した。

この表面にはアミノ基が形成されており,水溶液中でこのアミノ基とCu2+イオンの間に配位結合を形成できること,無電解Cuめっきによりフッ素樹脂上にCu膜を形成できることを発見した。独自に開発した感光性有機無機ハイブリッド樹脂材料を成膜後,フォトリソ法を用いて100μm幅の銅微細配線を形成することにも成功した。

この手法は通常の銅めっきに使用される貴金属Pd触媒を使用せず,すべて常圧下でのプロセスで配線形成ができるため,プロセスの簡略化と低コスト化にも寄与する技術となる。

今回の技術は,5G時代のスマートフォンなどの大容量高速伝送に寄与すると期待される,フッ素樹脂材料の応用展開に貢献する技術だという。配線幅の更なる微細化に向け,光照射プロセスの精密化を検討している。

また,レーザー照射を用いたダイレクトパターニングの手法も開発しており,更なる簡便な銅配線形成技術の開発に向け検討を行なうとしている。

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