東北大ら,試料を回さない3次元X線CTを開発

東北大学,東京学芸大学,筑波大学,高輝度光科学研究センター(JASRI)の研究グループは,試料を回転せずにミリ秒オーダーのX線CTを実現するための放射光マルチビーム化に世界ではじめて成功した(ニュースリリース)。

X線CTは,医療診断分野においてはCTスキャンの名称で知られている,被写体の投影像を多くの方向から撮影して,被写体の内部まで含めた三次元的な構造を可視化する方法となる。日本語ではX線コンピュータ断層撮影法と呼ばれている。

病院のCTスキャナの撮影時間は,通常は数秒~数10秒のオーダーだが,強力な放射光を用いると,ミリ秒オーダーの時間分解能で試料内部を三次元的に可視化できることが最近実証された。

しかし,多くの方向から試料を撮影する必要があるため,試料を非常に高速に回転しなければならず,流動性のある試料への適用や,その場観察のための様々な試料環境の導入が困難だった。そこで研究グループは,放射光をマルチビーム化するためのX線光学系を開発し,1msの撮影時間で三次元再構成ができることを世界ではじめて実証した。

X線CTに用いられている透過力の高いX線は,一般に物質との相互作用が小さいため,可視光の鏡による反射のように伝播方向を容易に制御することができない。この研究では,薄い単結晶を微細加工により作製し,双曲面上に湾曲させて,三段に配置することにより,±70°の投影方向をカバーするマルチビーム光学系の開発に成功した。

実験は大型放射光施設SPring-8のビームラインBL28B2の放射光を用いて行なった。この放射光マルチビーム化技術を用いると,多くの方向からの投影像を同時に取得できるため,試料を回転せずにミリ秒オーダーのX線CTが実現できる。なお,三次元再構成には、わずか数10方向の投影像から画像再構成が可能な最先端の圧縮センシングに基づくアルゴリズムを用いた。

この成果により,流動性のある試料や生きた生物などの動的3D観察がミリ秒オーダーで可能となり,また様々な試料環境の導入も可能であることから,物質・生命科学の基礎研究から産業応用に至る広い分野への波及効果が期待されるという。

例えば,ポリマー材料や接着界面の破壊過程や,生きた昆虫の3D観察による動的バイオミメティクス研究など,様々な応用展開を期待しているとしている。

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