分子研,電子観測に光電子分光測定装置を導入

分子科学研究所(分子研)の研究グループは,最新の光電子分光測定装置「Momentum Microscope」を導入した(ニュースリリース)。

新規物性の現象の解明や機能性材料・デバイス開発を展開するうえで,ますます原子レベルからの計測に基づいた理解が重要になってくる。興味深い物質や有用なデバイスはμmの多結晶組織や微細構造であることが往々にしてあり,従来の平均構造を測る分析法ではなく,顕微機能を併せ持った高性能電子状態計測装置が待ち望まれていた。

この装置は顕微鏡で微小領域を拡大し,その重要な部分の物性をつかさどる電子の挙動をつぶさに解明する分析器で,分子研 極端紫外光研究施設(UVSOR)の高輝度放射光施設からの最適なエネルギーの光を用い,試料温度を自在に制御するなど様々な工夫が詰まったシステムとなる。超伝導や触媒活性が発現する箇所・条件を直接観察するなど,従来にない視点からの物性・機能解析を目指す。

この装置では表面・薄膜・配向分子・化合物結晶試料の元素種を分別した顕微像を得ることができる。特に選択した微小領域からの価電子帯分散や組成分析の光電子分光測定が同時に行なえるので,組成・構造・電子状態がどのように物性・機能に結びついていくか研究することができる。

位置分解能50nm,運動量分解能0.01Å-1,エネルギー分解能20meVを達成,試料を9Kまで冷却でき,制限視野2μmからの価電子帯分散やフェルミ面を測定することができるという。

実空間・運動量空間の両方で拡大して計測できる光電子顕微鏡では放射光施設に導入された例として,世界最高性能を達成している。試料温度を9K(-264℃)から400K(127℃)まで自在に変えられる点は本装置の大きな特長で,物質の状態変化をその場観察できるようになるとする。

これまで結晶試料の価電子帯分散を計測する高分解能電子分析器や微細構造を観察する光電子顕微鏡が開発されてきたが,これらを組み合わせて放射光施設にて活用する装置としては国内外でも先駆けとなる。

今後は基礎科学・応用研究への波及効果だけではなく,この新しく開拓された分析器・分析法が測定技術の革新の先端事例となることも目指すとしている。

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