東工大,ストレスを捉える蛍光タンパク質を開発

東京工業大学は,細胞内の酸化還元状態をリアルタイムにモニターできる新しい蛍光タンパク質センサーを開発し,動物細胞や植物細胞内の酸化ストレスのたまり具合,光合成に伴う酸化還元状態が変化する様子などを捉えることに成功した(ニュースリリース)。

多くの酵素は還元されると,活性が上昇,つまりスイッチがオンの状態になる。したがって,細胞内の酸化還元状態を知ることは,光合成を行なう細胞の機能制御のメカニズムを探る大切な情報となる。動物細胞でも,酸化ストレスの原因になる酵素の還元の観察は同様に重要となる。

これまでも細胞内の酸化還元状態変化を知るためのセンサータンパク質が数多く開発されてきたが,これまで開発されてきたものはそれぞれに欠点があり,かならずしも使い勝手のよいものではなかったという。

今回研究グループは,緑色蛍光タンパク質(GFP)にさまざまな変異を導入し,環境の酸化還元状態が変化したときに蛍光のスペクトルが変化するセンサータンパク質を分子設計した。

このセンサータンパク質は,周辺の酸化還元状態が変化すると構造が変化する。さらに,タンパク質の構造変化が発色団を出発点とする励起状態の分子内プロトン移動過程に変化をもたらすようなセンサータンパク質分子を設計した。

こうして,タンパク質の分子表面にある2つのシステインが還元状態にあるときには青色の蛍光,酸化ストレスが生じると緑色の蛍光を発するタンパク質「FROG/B(Fluorescent protein with RedOx-dependent change in Green/Blue)」を得ることに成功した。

このタンパク質はこれまで作られたいずれのセンサータンパク質よりも簡便に,細胞内の状態変化をレーザー共焦点顕微鏡などで調べることができるという。実際に研究グループは,動物細胞や植物細胞内の酸化ストレスのたまり具合,光合成に伴う酸化還元状態が変化する様子などを捉えることに成功した。

研究グループは,このセンサーをがん細胞に利用すれば,効果がある抗がん剤のスクリーニングが簡単にできるようになるとする。また,光合成生物では様々な環境の変化に対して,代謝系酵素の活性制御に直接影響を及ぼす因子の解析に研究をさらに展開できるものだとしている。

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