澁谷工業ら,コロナ/インフルPCR装置を開発へ

澁谷工業と鹿児島大学認定ベンチャーのスディックスバイオテックは,新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスA型及びB型を1つの唾液検体から同時に検査診断を行なえる高速PCR検査装置の開発を目指し,共同開発契約を締結した(ニュースリリース)。

今回開発を行なう高速PCR検査装置は,唾液検体内の新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスA型及びB型の遺伝子を増幅し,各ウイルスの陽性反応をそれぞれ検出する3つの異なる波長の光を照射して蛍光強度を同時に検出し,陽性/陰性の判定を行なう。陽性の場合は,ウイルス量の測定も行なうことができる。

PCR検査を行なう前の処理工程である採取唾液検体からのウイルスRNAの精製(前処理工程)を,スディックスバイオテックが開発した独自の方法で行なうことにより,これまでのPCR検査で陽性と判定されていた感染性の無い遊離RNA(いわゆる死んだウイルス)は陰性として判定でき,Over Diagnosis(偽陽性)を避けることができるという。

また,処理工程中で検体中のウイルス粒子を濃縮するので,ウイルスが少ない唾液を検体としても検出精度を高めることができる。この前処理工程は,専門技術を必要とせずに1検体3分間程で簡単かつ短時間で行なえる。

装置のハード面では,独自開発の加温機構と温度制御により,検査時間15分間以内を目指しており,PCR検査に要するトータル時間は前処理時間を含め,従来装置に比べて大幅な時間短縮が図れるという。

さらに,1台で同時に8検体(陽性,陰性コントロールを行なうと6検体)まで検査が可能なこと,小型タイプであるため個人の開業医院をはじめとした病院施設で使用することができるといった特長があるとする。

新型コロナウイルスの感染症状はインフルエンザウイルスと似ているため医療現場での混乱が懸念されている。一方,感染対策としてオンライン診療の普及により患者さんからの唾液採取をリモートで確認して検査検体を入手する環境も整ってきていることから,この装置で検体採取がより安全で容易な唾液によるPCR検査がリアルタイムに行なえることが期待される。

装置開発終了後,澁谷工業は厚生労働省に一般医療機器としての届出申請を本年内に行ない,販売を開始する予定。装置の製造は澁谷工業が担当し,国内販売は,原則としてスディックスバイオテック,海外販売は澁谷工業が行なう。販売価格は未定だが,低価格での販売を考えており,初年度は数百台の販売を見込んでいる。

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