北大ら,究極透明ガラスの構造を解明

北海道大学,米ペンシルベニア州立大学,AGCは共同で,理想的な究極透明ガラスの構造を解明した(ニュースリリース)。

現代社会の情報通信は世界中に張り巡らされた光ファイバー網で支えられている。光ファイバーは主にシリカガラスから出来ているため,シリカガラスの光の伝搬損失を抑制することで,より少ない数の光信号増幅器でより遠くまで情報伝搬できる光ファイバーが得られる。

シリカガラスの光損失のほとんどは,レイリー散乱によるもの。シリカガラスの中ではガラスを構成する元素同士のつながり(=ネットワーク構造)のゆらぎがこのレイリー散乱の要因となっている。また,最近ではガラス中の何もない空間(空隙)が散乱体となってレイリー散乱を起こすことが知られている。

研究では,実際の試験が難しい高い圧力領域で,計算機を使ってシリカガラスを合成した。分子動力学シミュレーションで得られたガラスの基礎物性値は,現実のものをよく再現した。

そこで,ガラス中の空隙が散乱体となりレイリー散乱を起こすというモデルと,ガラスのネットワーク構造の密度ゆらぎを考慮した2種類の物理モモデルを使用して,圧力急冷プロセスで合成したシリカガラスのレイリー散乱定数を算出した。

計算の結果,圧力4GPa(4万気圧)で急冷したガラスにおいて,散乱体としての空隙がほとんど消滅し,シリカガラスのネットワーク構造が理想的な構造に近づくことがわかった。この圧力値は実験的にも大きいサイズのガラスを合成できる現実的な圧力範囲だった。

これまで,0.2GPa以下の圧力急冷ガラスにおいて,レイリー散乱を抑制できることが実験から示されていたが,圧力をそれ以上かけた場合の挙動はわからなかった。圧力急冷プロセスは実験的に難しいプロセスだが,この研究によって理想的な圧力値を予測できたことで,高圧装置などの開発に拍車がかかり,超透明なシリカガラスの実現への貢献が期待されるという。

そもそもガラスとは不安定な準安定状態だが,今回の研究により,ガラスに高圧急冷プロセスを適用すると,ガラスでありながらトポロジカルには秩序のある安定構造をとることがわかった。そして,得られたガラスの構造は光損失の抑制に極めて適した構造であることもわかった。

シリカガラスは光ファイバーの母材として広く利用されている。研究で明らかにした構造を持つシリカガラスを光ファイバーに応用できれば,光信号増幅器による増幅なしにデータを伝送できる距離を飛躍的に伸ばすことができるほか,究極的な安全性をもつ量子通信の社会実装へも貢献することが期待されるとしている。

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