京大,高効率でCO2を資源化する光触媒を合成

京都大学の研究グループは,水と光を使って二酸化炭素を有効な資源にリサイクルする光触媒の合成に成功した(ニュースリリース)。

今回,研究グループは,開発した光触媒を使うと,H2Oが電子源として機能し,H2OではなくCO2が選択的に還元されて,一酸化炭素(CO)が高効率で生成することを見出した。

これまで,酸化ガリウムの粉末に銀のナノ粒子を修飾した光触媒が,H2Oを電子源とするCO2の光還元に活性を示すことが報告されていた。しかし,この光触媒を用いるとCO2ではなくH2Oが還元されやすいことが問題だった。研究グループは,この光触媒に水酸化クロムを添加すると選択的にCO2が還元できることを報告しているが,CO2を変換する効率は依然低いままだった。

今回,この光触媒にカルシウムを添加すると飛躍的にCO2が還元される効率が向上することを見出した。この反応では,CO2から合成ガスの原料となる一酸化炭素が生成物として得られる。この光触媒を用いたときの出口ガスの一酸化炭素の濃度は1.2%に達する。この濃度は実際に使用されている合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)の濃度に近い値だという。

また,毒性が高いとされている一酸化炭素の検知器が反応開始すぐに鳴動し,高濃度の一酸化炭素が生成される。この時のH2OではなくCO2が還元される効率(選択率)は95%となり,開発した光触媒は,H2Oを電子源とするCO2の光還元を選択的に実現することができることになる。

活性向上のポイントとして,2段階のカルシウム種の添加がある。硝酸ガリウム水溶液に少量の塩化カルシウムを加えて,アンモニア水を滴下することで得られる水酸化物前駆体を高温で焼成すると,ガリウムとカルシウムの複合酸化物であるCaGa4O7が酸化ガリウム表面上に形成される。この光触媒に酸化カルシウムを物理混合して,銀と水酸化クロムを修飾すると高い光触媒活性を示すようになるという。

これまで報告されているH2Oを電子源とするCO2の光還元においては,測定装置の検出限界に近い活性の変化を議論していた。しかしながら,今回の結果を含めた研究グループによる報告によって,現実的な光触媒活性が得られることが分かってきた。

一方,今回の光触媒システムは,植物のように可視光では機能しないため,可視光領域の光で駆動するシステムにすることが重要となる。また,CO2を還元するとメタンやメタノールなど様々な物質を得られるが,現状では一酸化炭素のみが得られる。この還元生成物のバラエティーを増やすことも今後の目標だとしている。

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