光の回折限界を超える!数学的アプローチによる画像鮮鋭化技術

ライブイメージング技術に注目が集まっている。今年に入ってからだけでも,筑波大学らによる非線形光学顕微鏡を用いたラベルフリーイメージング(月刊OPTRONICS 3月号P94参照),東京大学らによるOCTを用いた血管新生のライブイメージング,名古屋工業大学による電界放出形走査型電子顕微鏡を用いたライブイメージングなどが報告されている。

細胞を生きたまま観察するライブイメージングは,我々人間を含む生物の営みを理解し,生体機能や疾病のメカニズムを解き明かすために今や欠かせないツールとなっている。再生医療など新たな医療技術の開発が進む今,バイオイメージングにおいて最も研究が活発なトピックの一つだ。

しかし,上述の研究を含め,一般的にライブイメージングには高価で特殊な顕微鏡や機材,面倒な前処理などが必要となる。そのさらなる普及のためにも,より手軽に扱える技術が求められている。

NASAの火星探査車,キュリオシティ=ローバー搭載の撮像装置CHEMCAMの撮影画像を鮮鋭化(左)オリジナル画像(右)鮮鋭化画像
NASAの火星探査車,キュリオシティ=ローバー搭載の撮像装置CHEMCAMの撮影画像を鮮鋭化(左)オリジナル画像(右)鮮鋭化画像

これに対し,キャスレーコンサルティングは数学的アプローチにより,画像データを直接鮮鋭化する技術「新型ノンブラインド デコンボリューション」を開発した。これは画像データに適用するアルゴリズムで,幅広く全ての光学系に使うことができる。これにより回折限界を超える数nmレベルの鮮鋭化が可能なので,光学顕微鏡でも細胞活動やタンパク質を捉えることができる。さらに真空や前処理が不要なため,標本にダメージを与えずにライブイメージングを実現する。

従来の画像鮮鋭化技術がフーリエ変換を使っているのに対し,この技術は特殊なヒルベルト変換による逆畳込み法を用いる。特許面からも全く新しい原理だといい,レンズやセンサーを最適化すれば,理論的には可視光の回折限界である200 nmの40倍となる5 nmの観察像を得ることが可能だとする。光学系が最適化されていない場合でも最大で10倍程度の鮮鋭化が可能で,センサーの微細化・高画素化が進む中,レンズの性能が追いついていないような場合に特に威力を発揮するという。

この技術について,開発を担当した西形淳氏はこう説明している。「従来技術とは違い,『新型ノンブラインド デコンボリューション』はレンズの点像分布関数(PSF)をデルタ関数へ変換するようなFIRフィルターを用いてデコンボリューションを実現しています。

FIRフィルタリングといえばアンシャープマスクが有名ですが,弊社の画像処理はこれとは全く違い,積分幾何学と特殊なヒルベルト変換によって構築した独自のFIRフィルターにより点像回復を行なうことで,「コントラスト回復」「エッジ強調」「分解能改善」の効果を得ることができます。

高SN画像であれば積算処理をせずとも僅か1フレームの画像で高速に絶大効果が得られ,例えば回折限界で撮影された画像に適応すれば回折限界を10倍以上超えた精細画像を得ることができます。

このような高度な鮮鋭化の背景には「周波数空間を見ない」画像処理があります。鮮鋭化技術というと高周波成分の回復であると捉えがちですが,周波数空間を見てしまうとフレーム窓(窓関数)やPSFの周波数特性などによる短時間フーリエ変換の不確定性によって,解析の限界に嵌ってしまいます。

弊社の画像処理では実空間でPSFを特殊なヒルベルト核に変換する工程が新規性のボトルネックであり,最終的に逆ヒルベルト変換を掛けることでPSFのデルタ関数化を図っています」。

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