ルビーレーザーを例にした固体レーザー入門

 

結晶の中に埋め込まれた発光原子を利用した固体レーザーについてのお話です。世界で最初に発振に成功したルビーレーザーを例にとって,固体レーザーに共通した話題を取り上げます。

ルビーレーザーは,発光原子であるクロムを無色透明なサファイア結晶の中にまばらに孤立させたものです。アルミニウムの酸化物をサファイア(Al203)と言いますが,これは無色透明です。これに0.01~0.5%のクロム(Cr)を混ぜますと,ピンク色になります。

ところどころのAl原子がCr原子に置き換わっています。周りの酸素原子と結合していますので,通常は3個の電子を失ったCr3+イオンとなっています。ちなみに,宝石のサファイアは,Al2O3中にチタンや鉄を不純物として含まれており,青色を呈しています。

レーザーは原子の発光を利用します。そのため,レーザー媒質を原子の状態に保たなければなりません。ガスレーザーでは,発光原子はばらばらの状態になっていましたが,固体では無理矢理ばらばらの状態にしなければなりません。原子同士の間隔が原子1個分程度に近づきますと,個々の原子の性格が失われてしまい,エネルギー準位に広がりが生じます。


図1
図1

そこで,図1のように発光原子(ゲスト:クロム)を母体(ホスト:サファイア)の中にまばらにまき散らして,発光原子同士の間隔を大きくとる必要があります。すなわち,母体である固体の中にあって,発光原子を孤立させる必要があります。

ところで,母体材料として満たさなければならない条件としては,ポンプ光とレーザー光の両方の波長に対して透明であることが最大のポイントです。不透明ですと,ポンプ光が発光原子の励起に有効に使われませんし,またレーザー光が母体から外に出てきません。発光原子が決まりますと,どの波長の光でポンピングするのが良いのかが決まりますので,当然母体材料も制限を受けることになります。

ポンプ光の吸収が大きすぎると,母体材料がポンプ光を吸収して温度が上がってしまいます。母体材料としては,熱特性も重要なファクターです。ポンプ光源としてフラッシュランプを使った場合,ポンプ光のほとんどが,発光原子を励起状態に上げるよりも,固体の温度を上げることに使われると言っても過言ではありませんので,ポンプ光の1%程度しか有効に利用されていないのが普通です。そうすると,母体材料の中では熱を効果的に逃がす工夫が必要になります。熱を逃がすだけでなく,母体としては熱が良く伝わるものが良いことになります。

しかも,形を工夫して熱を逃がさなくてはなりません。レーザー固体の温度が上がると,どういうことが起こるでしょうか。まず,固体の温度が上がりすぎると,レーザー固体そのものにダメージを与えます。固体に曲げとか歪みなどが入ってしまいます。さらに,ひび割れや軟化が起こる場合もあります。この問題は重大で,二度と使えなくなってしまうかもしれません。


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