偏光ドーナッツビームを生成するワンチップレーザ

1. はじめに

生命科学分野の発展に伴い,レーザ顕微鏡やバイオセンサ等の高分解能化や高感度化を実現するため,さまざまなアプローチで,微小な光場を形成する手法が提案されている。光の波長(λ)とレンズの開口数(NA)で決まるAbbeの回折限界(=0.6λ/NA)に対して,最もシンプルなものは,光の短波長化や,油浸や固体浸レンズの利用である。近年では,近接場顕微鏡における微小開口から染みだした光と物体による散乱の利用や,光と金属の相互作用:表面プラズモンの利用,STED(Stimulated emission depletion(誘導放出制御))顕微鏡に見られるドーナッツビームの利用などが挙げられる。このような回折限界などの従来の光の限界を超える技術において,光の形状(強度分布)や偏光,位相の制御は,世界共通の関心事である。

従来,「光学」の分野においては,ガウシアン状の強度分布を持つ単峰のレーザビームが理想的であり,その偏光や位相はビーム断面内で空間的に一様なものが議論されてきた。これに対して,1990年代後半より,上述のような生命科学分野の発展に貢献する新しい顕微鏡技術において,ドーナッツ形状のレーザビームが注目を集めている。ドーナッツビームは,偏光や位相が空間的な分布を持ち,その特異点によって強度分布がドーナッツ形状となるビームである。このようなビームは,空間位相変調器やさまざまな光学系の組み合わせによる共振器を用いた光源によって発生させられる。

この続きをお読みになりたい方は
読者の方はログインしてください。読者でない方はこちらのフォームから登録を行ってください。

ログインフォーム
 ログイン状態を保持する  
新規読者登録フォーム

同じカテゴリの連載記事

  • 高速波長可変レーザーと広帯域光音響顕微鏡 (国研)理化学研究所 丸山真幸 2019年11月19日
  • 新生児医療へのIoT導入の挑戦
    新生児医療へのIoT導入の挑戦 横浜国立大学 太田裕貴,稲森 剛,磯田 豊 横浜市立大学魚住 梓,伊藤秀一 2019年10月03日
  • ToFセンサーを用いた協調ロボットの安全対策のための近接覚センサー 福岡大学 辻 聡史 2019年09月04日
  • トンボから発見された紫外線反射ワックス
    トンボから発見された紫外線反射ワックス (国研)産業技術総合研究所 二橋 亮 2019年07月10日
  • ITOおよびIZOに代わる酸化インジウム系透明導電材料開発の試み
    ITOおよびIZOに代わる酸化インジウム系透明導電材料開発の試み 工学院大学 相川慎也 2019年06月07日
  • 低温レーザー照射による機能性セラミックスのマイクロ配線化プロセス
    低温レーザー照射による機能性セラミックスのマイクロ配線化プロセス 山形大学 西山宏昭 2019年05月13日
  • バンドギャップ(BG)制御されたグラファイト状窒化炭素の新規合成法の開拓~BG=2.7–0 eVの自在制御への挑戦~ 山形大学 石﨑 学,栗原正人 2019年04月05日
  • ホログラム光学素子と信号処理を融合したイメージング技術
    ホログラム光学素子と信号処理を融合したイメージング技術 東京工業大学 中村友哉 2019年03月11日