金と銀 どっちが偉い?

月谷昌之介

レ・ミゼラブルが映画になって,結構なヒットとなった。ミュージカルなので多くの歌とともに物語が進むのであるが,その中にエポニールという少女が歌う“On my own” という失恋の歌がある。“In the rain the pavement shines like silver(雨に濡れて石畳が銀のように輝いているわ)”という歌詞が印象的な雨夜の美しいシーンだ。

medals_2206054

ところで,レ・ミゼラブルの舞台は19世紀初頭のパリである。その頃のパリの街灯はレヴェルベールと呼ばれる,オイルランプの光を半球ミラーで下側に照らすものだった。この明かりによって夜の犯罪が大幅に減ったそうだから,それなりに明るいものだったのだろう。雨夜であれば月明かりも無く,ランプの光だけが濡れた石畳に反射していたにちがいない。オイルの燃える炎の色は,白と言うよりは赤黄みがかかった色である。

映画の中では歌詞の通り,色の無い銀色に石畳が輝いていたと思うが,本当ならば銀と言うよりは赤黄味をおびた金色に近い光になるのではないか,などと,ついつい野暮なことを考えてしまうのである。「雨に濡れて石畳が黄金のように輝いているわ」などという歌詞では悲しい恋の歌は成立しないから,演出上はもちろん銀色が正解に決まっているのである。

この続きをお読みになりたい方は
読者の方はログインしてください。読者でない方はこちらのフォームから登録を行ってください。

ログインフォーム
 ログイン状態を保持する  
新規読者登録フォーム

同じカテゴリの連載記事

  • カテゴリーの脳内フローラ 2020年03月31日
  • 情報通信の通信機能以外のご利益 2020年03月18日
  • 「どっちか」より「どっちも」 2020年03月03日
  • ボックスカメラの空洞 月谷昌之介 2020年03月02日
  • 聞くは一時の恥とは言いますが 2020年02月18日
  • ロマンス?グレー 月谷昌之介 2020年01月31日
  • 組織的積極的もの忘れ 2020年01月31日
  • 相撲放送を見ていて感じました 2020年01月17日