超高エネルギー宇宙線加速

 本連載は,近年進捗が著しいレーザー航跡場加速に関する包括的なレビューを翻訳したものである。原著者はレーザー加速のコンセプト提案者である田島俊樹氏,先駆的なレーザー航跡場加速実験を行なった中島一久氏,レーザー加速の実現に必須だったチャープパルス圧縮の発明者であるジェラルド・ムルー氏の共著である。
 2018年10月2日に発表されたノーベル物理学賞ではレーザーに関わる3氏の研究者が受賞,そのうちの一人が,ジェラルド・ムルー氏である。今日の高強度レーザーの礎がムルー氏によってもたらされていること,その功績に対して敬意を表したい。

7. 超高エネルギー宇宙線加速

この節では,自然もLWFAを実現しており,航跡場生成と関係する粒子の最高エネルギーへの加速に関係するすべての現象を実現していることを学ぶ。広い意味のプラズマ天体物理学については参考文献1)にレビューされているので,ここでは繰り返さない。

7.1 イントロダクション
私たちは,超高エネルギーへの粒子加速において,航跡場加速機構が自然の中で重要な役割を果たしている証拠を見つけつつある。これは,2つの事実を基礎にしている。i)高いエネルギーの宇宙線の生成については,ランダムに磁場に遭遇することで統計的に加速するフェルミ加速機構は〜1019 eVに近づくにつれてシンクロトロン放射エネルギー損失による厳しい限界に突き当たる。ii)自然と天体物理プラズマには,不安定で乱流的になってしまう場合とは別に,航跡場加速を可能とするコヒーレントな加速過程を作る指導原理が働く環境が存在している。その中でもっとも重要な指導原理は,波(もしくは擾乱)が,プラズマとの位相速度がプラズマ全体の熱速度より十分速い(例えば光速c)ので,相互作用において頑健であるため,プラズマはそう簡単に乱流的になったり破壊されたりはしない2〜4)ということである。

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