東北大ら,マルチフェロイック物質の制御手法を実証

東北大学,青山学院大学,大阪大学らは,新たな多機能電子素材として注目される「マルチフェロイック物質」において,新しい電子機能制御手法を実証し,その基礎原理を確立した(ニュースリリース)。

物質中で電気と磁気の性質を兼ね備えたマルチフェロイック物質は,磁場を変化させて誘電的な特性(電気分極)を制御することや,電圧を変化させて磁気的な特性を制御することができ,革新的なエレクトロニクス創成への期待から,世界中で活発に研究が行なわれている。

今回研究対象とした物質は,テルビウム(Tb)とマンガン(Mn)と酸素(O)からなる「TbMnO3」というマルチフェロイック物質。この物質は、-246℃以下の温度で電子が持つスピンが空間的に規則的に配列し,これに伴って強誘電分極が生じることが知られていた。

今回研究グループは,第二高調波発生を用いた光学的手法により,TbMnO3における電気的かつ磁気的な応答をする特異な強誘電分極を可視化することに世界で初めて成功し,マルチフェロイック物質に特有な強誘電分極の振る舞いを発見した。

この物質の特徴は,電場によってだけでなく,磁場によっても強誘電分極を制御できる点にある。これまでの研究から,磁場印加により結晶内で強誘電分極の向きが90度回転する。今回,この「磁場による強誘電分極の回転」過程を可視化してみると,回転の前後で強誘電ドメイン構造自体は本質的には変化していないことが明らかになった。

このような,電気分極の変化に直接的な影響を受けない強誘電ドメイン構造は,電気的な性質のみを持つ通常の強誘電体には見られないもの。この性質は,磁場印加の前は電気的に中性だったドメイン壁が磁場印加により荷電したドメイン壁に変化することを示唆している。

さらにこの過程において,強誘電分極の方向は磁場により意図した方向に90度回転することができ,その方向は自在に制御できることが分かった。

このメカニズムは,強誘電性を磁場で制御する新しいメモリ・ロジック素子の基礎原理として用いることができるだけでなく,電気的に異なる性質を持つ2種類のドメイン壁(電気的に中性なドメイン壁と荷電したドメイン壁)を磁場により選択的に作り出すことが可能になるため,将来的にはドメイン壁を利用した全く新しいナノスケールのエレクトロニクスへの展開が期待されるという。

磁石の性質を持つ強誘電体を電場・磁場等の外場により制御するミクロなメカニズムは,電気と磁気の強い結びつきを持つマルチフェロイック物質において一般的に成り立つことが期待されるため,同様の機構を持つ材料を研究するうえで重要な知見を与えるものだという。

今回の成果について研究グループは,新規な多機能材料における研究開発に新たな道を拓くだけでなく,今後,革新的なナノエレクトロニクスデバイスなどへの応用が期待されるとしている。

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