パナソニック,可視光通信「光ID」技術の概要を公開


パナソニックは,デジタルサイネージディスプレイやLED照明看板とスマートフォンを,可視光通信で連携させた「光ID」技術を用いた情報連携サービスを2016年4月より開始すると発表しているが( ニュースリリース ),これを前に報道関係者向けに技術セミナーを開催し,技術概要の説明とデモが行なわれた。

この「光ID」技術は可視光通信技術を応用し,LED照明の明滅を高速で変調させることで信号化したIDをスマートフォンのカメラで捉え,クラウドを介してサービスにひも付けするというもの。一般の可視光通信は専用の送受信機を用いるが,この技術ではスマートフォンのカメラを受信機として使用することができる。

LED照明とスマートフォンのカメラを組み合わせた同様の技術はこれまでもあったが,機種により性能の差があるスマートフォンのカメラでは明滅だけの変調だと確実な通信が難しく,人の目でも認識できるような低速の明滅で変調するか,RGB各色ごとに変調を行なう複雑な処理が必要だった(関連記事参照)。

パナソニックは今回,イメージセンサーの露光のタイミングを高速化することで,明滅だけでも十分に受信データの復号化が可能になる技術を開発した。イメージセンサーはラインごとに露光のタイミングが少しずつずれるため,これまでは1ラインに複数ビットの情報が重畳されてしまうことが通信の高速化を妨げていた。

しかし,スマートフォンのカメラが高性能化したことと,カメラの高度な制御が可能なOSが登場したことにより,露光時間を発光サイクル(KHzオーダー)よりも短くすることで,各ラインに一つのビット情報のみを受け取らせることができるようになった。


コア技術の概要(1)

コア技術の概要(2)

これにより,人間の目では全く明滅を感じることができない高速変調された信号の受信を実現した。通信速度についてはまだ公開する段階にないとしているが,「IDを取得するのにストレスフリーであることを第一に開発した」(担当者)と言うように,デモでは16bitのデータをスマートフォンをかざすだけ(同社発表:0.3秒以内)でIDを取得した。実用化時には24bit,36bitと受信可能な信号を増やす予定だ。

12月19日,20日に東京都中央区の銀座通りで行なわれた試行設置イベント「ヒカリで銀ぶら」ではiPhone(iOS 8〜9,iPhone5S以降)のみ対応するアプリが配布された。アンドロイドのスマートフォンも最新バージョンでは性能的な要件を満たしているので,順次対応する予定だという。


銀座資生堂に設置されたLED照明看板

銀座通りに設置されたLED照明看板

実際にデモを見て感じたのは,その認識速度の速さだ。これまでの技術ではスマートフォンを構えてからIDを取得するのに一呼吸あったが,今回はまさに「かざすだけ」でスムーズにIDの取得が行なえた。これは上記のようにスマートフォンのカメラの高性能化が大いに貢献しているものと思われる。

可視光通信を巡っては,専用の送受信機を用いた100Mb/sレベルの大容量通信が実現しているが,普及と言う意味においてはまだ十分にそのメリットを活かせるアプリケーションが登場していない状況だ。

カメラ付きのスマートフォンさえあれば可視光通信を実現できるこの技術は,通信速度こそ専用の送受信機を用いた技術には及ばないが,IDのみの配布でも,大容量データをWebに任せることで弱点を補うことができる。

似たようなIDの配布技術に電波を用いるBluetoothや,二次元コードのQRコードがあるが,人が大勢いる場所でのID取得が難しかったり,見ただけではIDの配布を認識することができなかったりするという弱点があった。しかし,可視光通信であれば,看板やサイネージを見てID配布を知ることができ,また,カメラを向けるだけという操作の直感性にも優れる。

今後,同社のデジタルサイネージは全て「光ID」に対応する

同社ではこの技術を組込んだデジタルサイネージや照明看板を2016年4月より発売するとしているほか,受信用のアプリケーションのライセンス提供や,クラウドのプラットフォームサービスを柱とするビジネススキームを想定する。また,近いうちに年間2,000万人を数えるとも言われる外国人観光客も対象に,観光案内などをターゲットにしてビジネス展開を進める。

本格的な商用開始はこれからだが,既に「光ID」は東京ビッグサイトのデジタルサイネージに採用が決まっている(2016年4月運用開始)ほか,東京急行の二子玉川駅に試行設置される(2016年1月)予定だ。

一方で他社も同様の技術を開発しており,似たようなサービスが複数展開されることで混乱も予想される。これについて同社は,業界内で規格化を提案していくと共に,送信機やアプリを開発するパートナー企業を募っていきたいとしている。

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